教えて!成年後見制度-10

朝日新聞の成年後見制度に関する連載記事です。
全10回のうち10回目の最終回の記事となります。
全体記事は最後に貼り付けています。

社会インフラとしての成年後見制度の問題点や新たな取り組みについて連載された記事の最終回は、成年後見制度の本質とその未来を識者が語っています。
あるべき姿と現状、つまり理想と現実のギャップをどのように埋めていくのかが問われています。

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2月21日 第10回(最終回)
1.タイトル
識者に聞く 利用前から意思決定の援助を

2.記事からの引用
1)認知症高齢者500万人と言われる時代に、成年後見制度の利用者は約21万人にとどまっています。
判断能力が衰えて支援が必要な高齢者が急増する状況に対応できていません。
成年後見人は家庭裁判所の審判で選ばれ、ほぼ無制限の代理権を持ちます。この強い代理権を背景に支援が進められる一方、横領などの不祥事も起きています。
月額2~6万円とされる報酬も必要で、一般の人が気軽に利用できる制度とは言えません。

2)成年後見の支援の内容は大きく2つに分かれます。ひとつは預貯金などの「財産管理」、もうひとつは医療や介護サービスの契約などの生活支援で「身上監護」と呼ばれます。
現在は財産管理に重点が置かれています。安心して地域で暮らすため、身上監護が果たす役割はますます大きくなります。生活を守るための身上監護が本質で、そのための財産管理です。

3)身上監護を中心とした制度の運用改善に加えて、必要な取り組みがあります。成年後見制度は、判断能力が低下した後(事後)の支援システムです。
しかし現実には多くの高齢者が、判断能力がはっきり低下する前から、消費者被害にあったり、契約トラブルに巻き込まれたりする不安を感じています。
成年後見による支援の手前から援助する意思決定サポートシステムが必要なのです。

4)モデルはあります。例えば社会福祉協議会が実施する「日常生活自立支援事業」です。
本人との契約で預貯金の出し入れなど日常的な金銭管理や見守りなどのサービスを提供しています。とても良い仕組みなので、予算や人員を確保し実施体制を充実させることが期待されます。

5)昨年、京都で医師や法律家、福祉関係者らが一般社団法人「日本意思決定支援推進機構」を設立しました。(中略)将来的には、成年後見制度は利用していないが判断能力に不安がある人から、手術時の医療同意、遺言作成、不動作の売買といった相談を受け、医療の知見を生かした意志能力の確認など、決定のサポートをしたいと考えています。
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最終回の記事だけあって成年後見制度の現状と、将来に向けての新たなビジョンなどが語られていて、記事の大半を引用する形になってしまいました。
確かに成年後見前の支援(受け皿)は非常に重要だと思いますし、特に高齢独居の方や高齢夫婦であればなおさらです。
またそれをさらに進めると、判断能力を失わないための健康支援や広報なども重要だとわかります。
単に後見制度だけをよくすればよいというものではなく、それゆえに大きな改革を進めることの難しさがあるのだと思います。

ただ一般にはレベルの高い安心な体制を求めれば専門家による対応が必要になり、そうすると費用が発生するという点が必ず付いて回ります。
その費用を今以上に介護保険等の公益的な支出で賄うのか、個人の自助に任せるのかという仕切りは、社会の割り切りとともに重要になってくると思いますが、記事ではその辺りにまでは踏み込んでいません。
新たな専門家の取り組みは素晴らしいですが、そのサービスを利用しようとすれば月額数万円の費用が掛かるとなればやはり利用する人は限られますし、かと言って利用しやすい価格設定にすれば従事者に十分な報酬が支払えなくなる恐れがあります。
その差額を負担するだけの財政が日本や地方自治体あるいは個人にあるのかと言えばそれは簡単ではないというのが実情だと思います。

少なくとも今は黙っていれば誰かが助けてくれるという時代や制度ではありませんので、現行制度を充分に理解した上で、自分がどういう道を選択するのか、つまりは結局のところ完全な解決策が無い以上、自分や家族が自分で判断していくしか仕方がないということが明白になったというのがこの連載を読んで私が感じた結論でした。

 

成年後見制度シリーズ全10回

教えて!成年後見制度-1
教えて!成年後見制度-2
教えて!成年後見制度-3
教えて!成年後見制度-4
教えて!成年後見制度-5
教えて!成年後見制度-6
教えて!成年後見制度-7
教えて!成年後見制度-8
教えて!成年後見制度-9
教えて!成年後見制度-10

 

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