財産を多めに引き継がせたい相続人がいる

生前の関係性や相続財産の分散を避けるなどの理由で、特定の相続人に財産を多めに引き継がせたい場合があります。
あるいは法定相続分通りに財産を均分しようとしても相続財産の性質上分割が難しいということもあり得ます。
理由はどうであれ財産の承継に偏りがあると相続人間で公平・不公平の争いが生じ兼ねませんので、生前から対策を取っておく必要があります。

こんなことが起きるかもしれません

遺産分割協議がまとまらない

被相続人が特定の相続人に財産を多めに承継させたいという考えを持っていても、そのための手続きをとっていないと結局は相続人間の遺産分割協議に委ねることになります。
当然のことながら相続人による遺産分割協議は法定相続分の影響を受けますので、被相続人が思っていた通りの遺産分割とならない可能性が高くなります。

対策

1)遺言による遺産分割の指定

遺産分割におけるトラブルを回避するためには、遺言により遺産分割の内容を指定しておくことが最も原則的な手続きとなります。
有効に作成された遺言があれば相続人全員でその内容以外の合意をしない限りは遺言の内容通りに遺産分割が行われることになります。
新たなトラブルを避けるために他の相続人の遺留分侵害を避ける内容で遺言を作成することが肝心です。

2)代償金の用意

財産を多く受け取る相続人が十分な資力を持っていれば代償金を支払うことで、円満な遺産分割を実現しやすくなります。
また被相続人が、財産を多く相続する相続人を受取人とする生命保険契約に加入しておくと、生命保険金は原則として遺産分割協議の対象にならないため、自動的に生命保険金を受取ることが出来、財産を多く相続した相続人はその生命保険金を他の相続人に対する代償金として活用することが可能になります。
(時々、財産を多く受け取らない相続人を受取人とする生命保険契約を結んでしまうことがありますが、生命保険金は相続財産ではないので相続分を均す効果はありません。遺産分割対策としては相続財産を多く取得する相続人を受取人にする必要があります)

3)付言等による事情の説明

遺言には遺産分割協議を経ないで財産の帰属を決められる機能がありますが、相続人がその内容に納得するかどうかは別の問題となります。
被相続人がなぜ特定の相続人に財産を多く残そうと考えたのかという理由を、他の相続人に理解してもらうことで心情的なわだかまりが解消される場合があります。
遺言には法的な効力とは別に「付言(ふげん)」によって思いを伝えることもできますので、積極的に活用を検討することが好ましいと言えます。