財産を隠す相続人がいる

相続発生後に特定の相続人(同居している子など)が他の相続人に財産を開示しないということがあります。
特に家督相続的な考えが残っている家庭や地域では、長男が総領として全ての財産を継げばよいという考えになりがちです。
遺産分割協議を行う際には全ての財産について明らかにする必要がありますが、財産の開示がなされなければ遺産分割協議も相続税の申告も正しく行うことは出来ません。

こんなことが起きるかもしれません

1)遺産分割協議ができません

相続財産を隠されてしまっては正しい遺産分割協議は行えません。
遺産分割協議が終了していない相続財産は法定相続分での共有となり、処分等を行おうとしても相続全員の合意が必要になりますので、財産を隠している相続人にしても何もできません。(金融機関の口座凍結前であればキャッシュカードなどでお金をおろすことはできますが、当然後で問題になります)
相続人同士の関係がその様な状態では相続財産は凍結を余儀なくされます。

2)相続税の申告が出来ません

相続税については各相続人が相続発生の翌日から10ヶ月以内に遺産分割協議を終わらせて税務申告を行うことになっています。
遺産分割が終わらない相続では各相続人が法定相続分で相続をしたものとして申告を行うとされていますが、相続財産の全容が分からないようでは正しい申告もままなりません。
結果、把握できている財産の範囲で申告をすることになりますが、後々修正申告が必要になったり、税務調査に入られてしまうリスクが高くなります。

対策

1)公正証書遺言

公正証書遺言は隠匿や改ざんができませんので、財産目録を添付しておくことで財産の存在が確認できます。
但し、遺言作成時と相続開始時とでは財産の構成が変わってる可能性はあります。

2)信頼できる人に財産の管理を委託する

税理士等、信頼できる第三者に財産の管理を託す方法もあります。
財産の規模が大きい場合には最も現実的な方法ですが、コストがかかりますので費用対効果の見極めが重要になります。

3)時が解決するのを待つ

遺言の無い相続の場合、相続人全員による遺産分割協議で財産の取得者を決めない限り預貯金を下すことも不動産を売却することもできません。
結果的に財産隠しを独り占めをしようとしても実質的な利益を得ることは難しいのが現実です。
預金凍結解除や不動産名義の書き換えのタイミングに合わせ交渉が可能になることがあります。
但し、その期間が3年を超える場合には相続税計算上の「配偶者の税額控除」や「小規模宅地等の評価減の特例」などの特例が適用できなくなり、特例を適用した相続税の更生手続きが出来なくなります。