相続人の仲が悪い

遺言の無い相続が発生すると相続人全員による遺産分割協議が必要になります。
しかし相続人同士の仲が悪いと遺産分割協議がまとまらず、その後の相続手続き(不動産の処分や預金の引き出し等)が進まなくなる恐れがあります。
また遺産分割協議が整うことを条件に利用できる相続税の軽減措置(配偶者税額控除や小規模宅地等の評価減の特例など)が利用できず、多額の相続税を納付しなくてはならない事態にもなり兼ねません。

こんなことが起きるかもしれません

遺産分割協議がまとまらず調停等の手続きに移行するかもしれません
どうしても遺産分割協議がまとまらない時は家庭裁判所へ調停や審判の申し立てを行う必要があります。
裁判所の判断は法定相続分による遺産分割が原則となるため、機械的に財産を分配するため相続人の意向に沿わない財産の処分を命じられることもあります。
裁判になればお互いに弁護士を立てて争うことになりますので時間とコストがかかります。

対策

1)被相続人の相続対策

相続人の仲が悪く相続で揉めることが明白な時は、被相続人(予定者)が生前のうちに予め手を打っておく必要があります。
最も一般的な方法は遺言を残すことで、遺言により財産を相続させる人を指定した場合には、遺留分を侵害しない範囲内で遺産分割協議に優先して相続財産の分配手続きを行うことが出来ます。
但し、遺言が自筆証書遺言の場合、書き換え、隠匿、紛失、有効性の疑義(無理やり書かされた遺言である等の言いがかり)等が起きる可能性がありますので、書式の不備が起こり得ず、原本を公証役場で保管してくれる公正証書遺言での作成が望ましいです。

2)遺言は遺留分を考慮した内容にする

遺言を書いても、相続人の遺留分は侵害できませんので、それを踏まえて遺言を作成する必要があります。
遺留分を取り戻す請求のことを遺留分減殺請求と言いますが、減殺請求がなされてしまっては揉める相続を回避したことにはなりませんので遺言を書いた意味が無くなってしまいます。
尚、民法改正により2019年7月1日からは、遺留分が金銭債権化され「遺留分減殺請求権」ではなく「遺留分侵害額請求権」となります。
つまり遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害した人に対して遺留分を侵害された価額について金銭債権を有することになり、不動産の共有持ち分の様な現物での弁済は行われなくなります。

3)遺言の付言を活用する

遺言は遺言の存在そのものが争いの種になることがあります。
なぜその様な遺言を書いたのか、その背景が理解できないと法律的な効果はあっても相続人の心情的な部分までを納得させることは出来ません。。
遺言には法律的な効果は無くても、この内容の遺言を書いた理由などを記すことができる「付言」というものがあります。
遺言の本文が法律的な内容を書くのに対し、付言は背景や想いを記すもので、付言により感情的なわだかまりを解消させる効果も期待できます。
被相続人の真意を遺言の「付言」によって相続人に伝えることが重要になります。

4)相続財産の入れ換え

関係性の薄い相続人ほど、遺産分割協議は法定相続分を現金で後腐れ無く分けることを希望します。
相続財産が不動産など分けづらい財産が中心の場合は、生前のうちに被相続人の手で遺産分割がしやすい現金等に換えておくことが必要です。