不動産の売却の流れ

言うまでもなく不動産は思い立ってすぐに売却できるものではありません。
相続にかかわる不動産の売却では、売却理由は大きく分けて次の3つに該当することが多いですが、中でも相続税の納税資金のための売却は相続税の納付期限(相続開始の翌日から10ヶ月以内)の制限があるため、時間的な余裕が殆どありません。
不動産の売却にあたっては全体の流れを把握することで、今のうちに出来る準備を進めておくなど余裕を持った計画を立てることが出来ます。

<相続にかかわる不動産の主な売却理由>

  1. 相続税納付資金のための売却
  2. 相続人の間で売買代金を分割する換価分割のための売却
  3. 相続で取得した不動産を現金化するための売却

不動産の売却においては概ね以下のような手順で取引を進めていきます。

不動産の売却の流れ

1.書類の確認

「3.不動産の売却時に必要な書類」でもご説明しましたが、不動産売却には欠かせない書類があります。
特に売却しようとしている不動産を取得した時の書類などは時の経過とともに散逸していることがあり得ますので、今のうちに確認をしておくことが望ましいと思われます。

<予め確認しておきたい書類>
各書類の説明は前項「3.不動産の売却に必要な書類」をご参照ください。

 

土地・建物共通 登記済み権利証(登記識別情報)
土地・建物共通 その不動産を取得した時の契約書や領収書等
土地 測量図
隣地との境界確認書類
建物 建築確認済証・検査済証
※増改築時のものを含みます
設計図書
※増改築時のものを含みます

上記の書類は、普段は必要となる機会は少ないですが、売却をしようとする際にはとても重要となる書類です。
紛失してしまっている時でも再発行出来ないものも多く、見つからない場合は別の書類等で代用したり新たに作成し直したりする必要があります。
これらの書類が無い場合でも売却事態が出来なくなるということはありませんが、売却価格には影響が出ることも考えられます。

2.境界確定・地積測量(面積の求積)・越境の解消

既に隣地との境界が書面により明確に確定していれば良いのですが、そうでない場合には予め隣地所有者との境界確定を行っておくことが望ましいです。
これは境界が未確定の土地は価値が下がるだけでなく、将来的にトラブルを生む可能性があるからです。
境界が確定してさえいれば地積の測量や越境の判断もしやすくなりますので、まずは境界確定がなされているかが重要になります。
特に気を付けて頂きたいのは、法務局に登記されている「登記簿謄本」、「公図」、「地積測量図」等は必ずしも境界や面積を正確に確定している書類とは限らないということです。
あくまでも隣地所有者との間で書面上により確認をした境界確定書面と、それに基づいた登記や地積測量が行われている必要があります。

3.価格査定

不動産(土地)の価格には「公示地価(基準地価)」、「路線価」、「固定資産税評価額」という目的の異なる3つの公的な価格や、不動産鑑定士による「鑑定評価額」などがありますが、これらはいずれも実際の売却価格、いわゆる市場価格とは異なります。
しかし不動産を売却しようとする時に最も重要なのは言うまでもなくその不動産がいくらで売れるのか?という市場価格です。
一方で不動産は車などと異なり同一の商品が存在しないという特徴があります。
また「隣の土地は借金をしてでも買え」という格言があるように、買う人によってもその価値が異なります。
つまりその不動産がいくらで売れるかということに関しては、ピンポイントで正解となる金額があるわけではなく、近隣での販売実績等を参考にある程度幅を持って考えざるを得ないというのが実情です。
売却価格の査定は不動産業者に売却活動と合わせて依頼をするのが一般的ですが、インターネットなどの情報をもとにご自身で大体の金額を把握することも可能です。
不動産の価格は、土地であれば立地、面積、形状、道路付け(道路との位置関係)、法律による規制の有無等によって決まり、建物であればそれらの条件に加え築年数などが考慮されます。
もちろん、先に述べた書類等の有無やその他の要因が影響してきますので、他の販売事例を参考にプラスマイナスの要因を反映させて価格の目安とします。

4.販売活動

実際に不動産を売り出すにあたっては専門的な知識が必要になることや、トラブルを避けるため不動産業者に依頼をするのが一般的です。
売却活動の依頼を受けた不動産業者は、当該不動産の各種調査(書類の有無や法的な規制、その他問題になりそうな点の洗い出しなど)を行い、売り出し価格を査定した上で、販売活動を開始します。
尚、売主が不動産業者に売却を依頼する場合には「専任媒介」、「一般媒介」、「専属選任媒介」の3つの依頼形態があります。
(「媒介」は仲介という意味です)
それぞれにメリット・デメリットがあり、不動産業者に課せられる義務等も異なりますので、事前にしっかりと説明を受ける必要があります。
(不動産会社の具体的な販売活動につきましては「不動産会社の売却活動」をご参照ください)

1)専任媒介

売主が1つの不動産会社にだけ仲介を依頼する媒介契約で、他の不動産会社に仲介を依頼することはできません。
これは他の不動産会社に売却の情報を流さないということではなく、他の不動産会社へは売主が依頼した不動産業者を通じて情報を流すという意味で、売主の窓口となる不動産会社を一社に限定されます。
売主からすると自分が依頼した不動産に責任を持って買主を見つけてもらうという契約形態となります。
不動産業者には情報公開や売主への報告等の期間や頻度について義務が課せられます。
尚、媒介契約の期間は3ヶ月が上限となります(更新可)。

 

2)一般媒介

売主が複数の不動産会社に仲介を依頼する媒介契約です。
依頼を受けた不動産会社はそれぞれ独自に買主を探し、情報も各社がそれぞれ公開します。
一般媒介では複数の不動産業者と同時進行で交渉が進む可能性がありますので、売主にて主体的に交渉の優先度等の交通整理を行う必要があります。
不動産会社に課せられる情報公開や売主への報告義務は軽くなり、媒介契約の期間にも期限はなくなります。

通常、売主が選択するのは「専任媒介」か「一般媒介」のどちらかが多いです。
信頼できる不動産会社に売却を任せる場合には「専任媒介」を選び、自らが積極的に複数の不動産会社と打ち合わせをしながら売却を進めたいという場合には「一般媒介」を選ぶと良いと思います。

3)専属専任媒介

1つの不動産会社にだけ仲介を依頼する点は「専任媒介」と同じですが、売主が自ら買主を見つけた場合にも、依頼した仲介業者を通して契約をする形態となります。
媒介契約の期間は3ヶ月が上限となります(更新可)。

4)仲介手数料

不動産会社を通じて売買契約が成立した場合には、売主は仲介手数料という成功報酬を支払います。
価格は簡易計算で、

不動産の売却の流れ

となります。
この金額はあくまでも上限ですが、大く取引では仲介手数料は上限およびその近くの金額でご請求されることが多くなります。

5.物件見学・価格交渉

販売活動が始まると、お客様が実際に物件を見学しに来ます。
建物であれば内部を見せる必要がありますので、自分が住んでいる状態で売り出しをする場合にはそのための体制を整えておく必要があります。
購入希望者はすぐに現れることもあれば、その逆もあります。
あまりにも反応が鈍いときには販売価格を下げるなどの対策を講じる必要がありますし、稀に複数の購入希望者が現れた時にはオークションの様に値段が吊り上がることもあります。
売却活動の結果、購入希望者が現れたときには、価格をはじめ各種交渉が行われることになります。
またこの時点で売主は不動産にかかわる様々な情報を相手方に開示する必要があります。
特に重要なことは「悪い情報を隠さない」ということで、交渉が破談になったり値引きの材料にされることを避けたいがためにマイナスの情報を隠したことが、後々大きなトラブルにつながるケースは非常に多いです。
これらのハードルをクリアして売主・買主双方が納得できる契約条件が整えば、速やかに契約手続きに移行します。

6.契約手続き

売買条件が整えば、その内容を詳細に記載した売買契約書を取り交わします。
場所は不動産業者の事務所で行うことが多いです。
売買契約書をはじめとする各種書類に記載される事項は、

  1. 対象不動産の概要
  2. 売買価格
  3. 引き渡しの時期、売却の各種条件
  4. 契約違反時のペナルティ
  5. 金融機関の融資に関する内容
  6. 引き渡しをする書類の種類

などととなります。
通常、契約締結時に買主は売主に対し契約時に売買代金の5~10%に当たる手付金を支払います。
また購入者の多くは金融機関の融資を受けるため、その手続きのため契約の締結から売買代金の決済及び物件の引き渡し(権利の移転)までには数週間のタイムラグがあるのが一般的です。
通常、売買契約においては一定の期間内に金融機関から融資の承認が下りない場合には契約が白紙撤回されるという「ローン条項」が設定されますので、金融機関への事前審査の実施や買主の属性確認などは売買契約締結前に済ませておく必要があります。

7.売買代金の決済と引き渡し

売主は売買代金の受け取りと同時に所有権等の権利を買主へ移転します。
原則として「売買代金を支払う」という買主の義務と、「物件を引き渡す」という売主の義務は同時履行の関係にあるからです。
所有権の移転であれば、売主は売買代金の着金を確認した上で、司法書士に所有権の移転登記に必要な登記済権利証(登記識別情報)や登記委任状、印鑑証明書等の書類を渡します。
また売却する不動産に抵当権が設定されている場合には、抵当権の抹消は売主の義務となりますので抵当権の抹消書類(金融機関等の抵当権者から受け取ります)も併せて交付します。
融資を受ける取引の場合、決済場所は融資を取り扱う金融機関となり、時間は金融機関の営業時間である平日の日中(通常は着金確認やその後の登記手続きの関係で午前中)に行うことになります。
売主は代理人でも構いませんが、本人が立ち会う場合にはお仕事等の都合をつけて頂く必要があります。

不動産の売却は概ね上記のような流れで進んでいきますが、各段階ごとに重要なポイントがありますので、売主は売却を依頼した不動産業者と充分に意思疎通を図ることが肝要です。
この辺りの呼吸は人間関係による部分が大きいので、長丁場の不動産の売却においては誰に仕事を依頼するのかということが非常に重要になります。