不備な遺言が残っている

不備な遺言とは法的な要件を満たしていないため効力を有しない遺言を指します。
遺言は被相続人の死後の財産処分等を規定する重要な法律的効力を持った書類なのですが、様式が厳密に定められており、その様式を満たしていることが有効性の要件となっています。
法律的な要件を満たしていない遺言は「遺言のようなもの」でしかないため、被相続人の生前の意志は分かるものの、相続人はそれに縛られないという複雑な状況を生み出してしまいます。(「遺言」についてはこちらをご参照ください)

こんなことが起きるかもしれません

法律的には不備であっても被相続人の遺志であることには違いがありませんので、遺言に沿った遺産分割を主張する相続人と、遺言にとらわれずに遺産分割協議で決着を図ろうとする相続人に分かれるかもしれません
法律的に無効な遺言は「のようなもの」ですので、本来的には遺産分割協議で解決を図るのが筋ですが、その遺言で多くの財産をもらえるはずだった相続人はその内容通りの遺産分割を主張するものですし、それ以外の相続人からすると法律的な効力の無い遺言に従う必要はないと考えるのが普通です。
ゼロベースからの話し合いとは異なり、被相続人の考えが分かる分だけ却って遺産分割協議がまとまらない恐れがあります。

対策

遺言には3種類ありますが、実務的に多いのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
公証人役場で公証人が作成する「公正証書遺言」においては様式の不備が生じることはありませんので、法的要件を満たさない遺言はほぼ全てが自筆証書遺言によるものです。
手軽に書けてその存在を誰にも知られない点が「自筆証書遺言」の良いところですが、全てを自分で作成するため不備が生じやすいという欠点があります。
書式に不備があると法律的な効力が生じないばかりか、後々深刻な問題を引き起こす可能性があることに十分留意をして、必ず法律で定める様式を守って作成する必要があります。