相続財産がわからない

親が全ての財産を管理していて、相続人である配偶者や子供が財産について一切把握をしていないということがあります。
地主さんのご一族や親が事業を営んでいるご家庭、あるいは子供たちは独立していて親が田舎で一人暮らしをしている場合などによくみられるケースです。
相続財産の開示について親が協力的でない場合、財産の全容を把握することは思いのほか難しいものです。

こんなことが起きるかもしれません

相続財産が確定しないことには遺産分割協議ができません
相続税は相続発生の翌日から10ヶ月以内に申告納付する必要がありますが、遺産分割協議が終わらないと正しい申告はできません。(一旦、法定相続分で納税することになりますが、「配偶者の税額控除」や「小規模宅地等の評価減の特例」が使えません)
また相続税の申告が不要の場合でも、遺産分割協議が終了しないと財産の帰属者が決まらず、自由な処分等が出来ません。
さらに財産に対して借り入れ等の借金が多い場合には、相続人は相続放棄の検討をしなくてはなりませんが、相続放棄の判断は原則として相続開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。
相続財産が分からないということは相続放棄もできないということになります。
相続が開始してから相続人が相続財産を調べる作業は思いのほか骨が折れる作業となり、税理士などの専門家に依頼をする必要が生じるかもしれません。

対策

1)被相続人において財産目録を作成

言うまでもなく、どの様な相続財産があるのかを被相続人がご自身の責任で遺言書やエンディングノート等に残しておいてくれるのが最も確実な方法です。
取引銀行や取引している証券会社、所有している金融資産や不動産など、残高や種類が多少変わっても、どこにどういう財産があるのかが分かるようにしておいてもらうだけで相続人の手間は大幅に軽減されます。
特に借入金や保証債務などマイナスの財産は期間の定めのある相続放棄とも関係しますので特に重要です。
相続人としても相続が発生した時にどのような財産があるかだけでも分かるようにしておいて欲しいことは、ことあるごとに伝えておく必要があります。

2)相続人が自力で財産を探す

被相続人が財産の目録を作成していない場合でも、税理士に確定申告等を依頼していればある程度の財産構成は分かると思います。
しかし税理士とは言え申告に関係のない財産までを把握しているとは限らず、結局それ以外の財産については、相続人が自ら探すしかありません。
財布の中のカード類や通帳類、金融機関からのお知らせハガキ、固定資産税の納税通知書はもとよりカレンダーやタオルなどを判断材料に関係各所に問い合わせをしますが、インターネットバンキングなど紙の記録が少ない財産は見落としがちになります。
基本的な方法としては金融機関への取引照会や市町村役場での名寄帳の取り寄せ(不動産の場合)などを行う必要がありますが、これらの手続きをするには問い合わせをしている人が相続人であることを証明する必要がありますので、それらの書類は予め用意しておく必要があります。
相続税の申告が予定される場合には時間的な余裕がありませんので、場合によっては専門家にも協力を依頼し調べるしかありません。(財産の見落としは、遺産分割協議のやり直しや相続税の修正申告の原因となります)