相続財産を安易に共有してしまう

相続が発生すると遺言の無い相続の場合は、相続財産は一旦法定相続人による共有の状態となります。
その後遺産分割協議により各相続人の相続分を決めていくのですが、不動産など分割がしづらい財産の場合はそのまま共有状態で落ち着いてしまうことがあります。
実生活上はそれで支障がないというケースも多いのですが、将来的には深刻な問題が発生する可能性があります。

こんなことが起きるかもしれません

持ち分の細分化により将来的に解決が困難になる

所有権が共有状態の場合、その財産の処分には共有者全員の合意が必要となります。
一方、共有者に相続が発生した場合、その共有持ち分がさらに共有者の相続人によって共有され所有権が細分化していく可能性があります。
一般に所有権の細分化が進むと、共有者同士の関係性は希薄化していきますので、共有者が増えれば増えるほど共有状態の解消や財産の処分はしづらくなることになります。

対策

1)原則として共有は避ける

遺産分割協議においては財産の共有化を避けるのが原則です。
共有化した不動産をすぐに売却することが決まっている場合などを除けば、安易な共有化は問題の先送りにすぎないことを認識して、その相続において確実に遺産分割を終了させておくことが大切です。

2)共有持分の売却

自身の共有持分を売却することも可能です。
但し、売却先は限定され、殆どの場合が

  1. 他の共有者
  2. 共有持分の買い取り業者
  3. 投資家

への売却となります。
価格は他の共有者に売却する場合を除けば、かなり安くなってしまうのが実情です。
例えば、共有持ち分1/4ずつで所有されている不動産の場合、全体では100の価値があったとしても、共有持ち分だけを売却しようとした場合にはその1/4の25の価格では売却できません。
利用に制約のある共有持ち分は、「所有権価格 × 共有持ち分」の価格よりもかなり割り引く必要があります。

3)共有物分割請求

共有者は裁判所に対していつでも共有状態の解消を請求することができます。
不動産の場合は現物のまま分けることが難しいので、競売により換金して分割するか、価格賠償によりある共有者が他の共有者に代償金を支払って持ち分を取得するといった方法を採用することが多いです。
共有物分割請求は裁判所の手続きであり強制力があるため共有状態解消の最後の切り札となります。