親の面倒を見た相続人と見ない相続人がいる
親が被相続人で複数の子供が相続人の場合、法律的には子供の法定相続分は均等です。
一方で親の老後の世話を子供が均等に負担するというケースはそれほど多くなく、同居している子供(とその家族)や近くに住んでいる子供の負担が大きくなりがちです。
親としては面倒を見てくれた子供に多めに財産を残したいと思ってはいても、何もしなければ法律の定めるところにより均分相続となってしまいます。
こんなことが起きるかもしれません
1)生前の介護等は扶養義務の範囲です
老親の面倒を見ることは親子間の扶養義務とされているため、寄与分として相続分に反映されることは基本的にはありません。
親の面倒を見る見ないにかかわらず相続分は均等となります。
2)自宅以外の財産が少ない場合は自宅を売却せざるを得ない場合があります
自宅以外の相続財産が少ない場合、均等な相続を実現するためには自宅を売却して現金に換えて遺産分割をせざるを得なくなることがあります。(換価分割)
時に被相続人を一生懸命世話をした同居相続人が住む場所を失うことになるという理不尽が生じることがあります
3)遺産分割協議がまとまらず、相続が塩漬けになってしまう
遺産分割協議がまとまらないと財産の処分ができないため、預金の引き出し、不動産の売却や貸し付け、名義変更等ができません。
4)やむを得ず、相続人全員が法定相続分で共有する
法定相続分で遺産分割をしようとする場合、現金であれば法定相続分で分割できますが、不動産等は持ち分での共有となるため、共有者全員で意見がまとまらない限り処分等を行うことはできません。
特に共有者に次の相続が発生してしまうと、さらに共有者が増えてしまい収拾がつかなくなる恐れがあります。
対策
1)遺言
遺留分を侵害しない配慮をしつつ、世話をしてくれた相続人の取得分を多くするような遺言を書いておきます。
遺言の内容は原則として遺産分割協議に優先しますので、特定の相続人等に確実に財産を遺すことが可能になります。
またなぜそのような遺言を残したのかという理由を、遺言書の「付言」あるいは「エンディングノート」などを利用して想いを伝えることが大切です。
2)子供同士の話し合い
相続人である子供同士で親の介護負担について生前に話し合っておくことが大事です。
さらに子供同士で負担と相続についての認識をすり合わせておくことも必要で、それにより親も遺言を書きやすくなることがあります。
(親としても遺言を書くのは良いけれど、内容は子供たちで決めてくれというケースがあります)。
3)生前贈与
自宅以外の相続財産が少ない場合に、世話をしてくれている相続人に自宅の持ち分を生前贈与で移転したり、生命保険金の受取人に指定する方法があります。
(前項「自宅以外の財産が殆どない」をご参照下さい)
4)記録を残しておくこと
相続の発生に備え介護等の世話をしている相続人は介護の記録や出金記録をきちんと記録しておくことが必要です。
法的な効力は無くても、自分が行ってきたことを正当に主張する根拠となります。