不動産の売却にかかる費用

不動産は価格の高い商品である一方、売るためにかかる費用も決して少なくありません。
不動産を売却した後に手元に残るお金は、売却価格ではなくこれらの費用をすべて差し引いた後の金額となりますので、不動産等を売却して相続人で分配する換価分割などにおいても、経費の支出を見込んだ手元に残る金額が重要になってきます。
不動産の売却においては必要経費の試算を欠かすことが出来ません。

<販売活動中にかかる費用>

不動産の売却にかかる費用

1.販売活動を行う前にかかる費用

1)遺産分割協議書等の作成費用

相続が発生すると相続人が一人しかいない場合などを除いて、遺産分割協議書を作成する必要があります。(遺産分割協議書の作成は法律で定められた義務ではありませんが必須なものとご理解ください)
遺産分割協議書は自分たちで作成することも可能ですが、文言の不備や財産目録の記載漏れや等のトラブルを避けるためには専門家に依頼する方が無難です。
また相続人の確定のために被相続人の家系をすべて辿って戸籍を取り寄せるといった作業も必要ですが、これも専門的な知識が必要になることが多く専門家に依頼することが望ましい作業です。
これら作業は弁護士、司法書士、行政書士等の士業の方に依頼しますが、費用は一概には言えません。
相続する財産の数や金額、相続人の数にも拠りますが作業一式を依頼すると大体10万円~30万円ぐらいになると思われますが、依頼をする前に相続人や財産の大まかな状況を説明して目安の金額を確認するのが無難といえるでしょう。

2)登記費用

不動産を売却しようとするときには、原則として不動産の登記は売主名義になっていなくてはいけません。
これは相続の対象になった不動産でも同様で、相続した不動産を売却する場合には必ず被相続人からの所有権が移転したことを表す相続登記(あるいは遺産分割登記)を行う必要があります。
遺産分割協議や遺言等で不動産を引き継ぐ人が決まっている場合にはその方の名義に所有権を移しますが、引き継ぐ人が決まっていない場合でも、相続人全員の共有かあるいは売却を前提として便宜的に誰か一人の名義に変更する必要があります。
不動産の所有権移動の登記は自分でもできますが、書類の不備等が起こりやすいので通常は司法書士に依頼をします。
司法書士への支払いは、登録免許税という税金と司法書士に対する報酬となります。
登記する不動産の価格等によって金額は異なりますが、一般的なご家庭の自宅の相続登記であれば数万円から30万円の幅に収まることが多いと思います。
(役所からの書類取り寄せ、司法書士の出張費用等の費用が別途必要になることがあります)

3)測量費用

土地を売却しようとする場合、隣地所有者との間で境界確定がなされた測量図(確定測量図)を用意することが望ましいです。
確定測量がなされていない土地は、土地の面積や形が確定していない土地ですので、結果的に売却価格にも影響を及ぼします。
土地の測量は土地家屋調査士という専門職に依頼します。
土地の形状や隣地所有者の数(官民)などによって価格は変わりますが20~50万円はかかるとお考え下さい。
もちろん面積が広く、隣地所有者などの関係者が多い場合や参考となる資料が極端に少ない場合には価格はもっと高くなることもありますので、事前に見積りをもらいよく検討することが大事です。
土地の測量は隣地所有者など相手がいる作業なので完了までに時間がかかることが珍しくありません。
また被相続人が生きているうちであれば隣地所有者との関係性もはっきりしていることが多いですので、出来れば土地の測量は被相続人の生前に済ませておければ残された相続人の苦労は少なくて済みます。

4)解体費用・建物現況調査費用

建物付きの不動産の場合、建物が今後の利用に耐えるものであればそのままでもよいですが、そうでない場合は解体して土地として売却した方が早く売れる可能性が高くなります。
老朽化して使い道のない自宅を建物付きのまま売却して、土地の購入者に建物解体をしてもらおうという場合には、買主は解体後のイメージが付きづらくその分売れ行きは悪くなりますし、売買価格も解体費用分以上の減額交渉がなされると考えておいた方がよいと思います。
また建物を使用を前提に売却する場合でも、2018年から宅建業法にが改正され、既存(中古)建物に関しては買主が安心して取引ができる様、契約前に建物の構造や雨漏りに関する調査を行うことを推奨する制度が設けられました。(義務ではありません)
売主負担で建物の現況調査(インスペクション)を行うことになった場合には、その費用も掛かるようになりますが、その分売れやすくなったり値引をしなくて済む効果もありますので費用対効果については一概には言えません。(インスペクションの費用は目安で5万円前後となります)

2.販売活動中にかかる費用

原則として販売活動にかかる広告費などは特別な依頼が無い限り不動産業者が負担しますので、売主が負担するお金はありません。

3.売買契約締結以降にかかる費用

1)印紙税

売買契約書の原本には印紙を貼付します。不動産の売買価格によりますが一般的な住宅であれば契約書1部当たり5,000円から3万円の間になることが多いです。
(通常、売買契約書は売主・買主で2部作成します)

2)抵当権抹消費用

売却する不動産に金融機関等債権者の抵当権等が設定されている場合には、売主の責任で抹消して引き渡しをしなくてはなりません。
(通常は決済代金を債権者への返済に充てることで、決済と同時に債権者等の承諾を得て抵当権等の抹消手続きを行います)
抵当権の抹消は自分でもできることにはなっていますが、取引実務上は司法書士への依頼が必須となっております。
費用は1~3万円程度のことが多いです。

3)不動産仲介手数料

不動産会社への成功報酬となります。
売主および買主が負担する仲介手数料は、

不動産の売却にかかる費用

となり、多くの場合上限額でのご請求となります。
(売主・買主がそれぞれ上記式による仲介手数料を負担します)
仮に3,000万円で売買契約が成立した場合には、

(3,000万円 × 3%+6万円) × 1.08=103.68万円

が売主及び買主がそれぞれ支払う仲介手数料の上限となります。
尚、仲介手数料の計算は消費税を除いた本体価格で行います。
一般に、不動産の売却に占める経費の中では、不動産業者へ支払う仲介手数料が最も大きなウエイトを占めることが多いです。

4)譲渡所得税等

個人が不動産を売却して利益が出た場合には譲渡所得税等(譲渡所得税+住民税)が課税されます。

不動産の売却にかかる費用

譲渡所得税はあくまでも利益が出た場合の課税ですので、利益がない場合(譲渡損失が生じている場合)には課税はありません。
また利益が出ていても、居住用財産を売却したり買い換える場合には3000万円の控除や課税の繰り延べ特例などの特別措置があります。
譲渡所得に含まれる項目や計算式、保有期間による税率の区分、適用できる特例等、計算には専門的な知識が必要ですので、具体的な計算は専門家に相談することが望ましいです。
(詳しくは「相続不動産と税金」をご参照ください)

不動産を売却する場合の経費については、売買価格や利用できる特例等により大きく異なりますので一概にいくら位と言うことが出来ません。
相続に関連して不動産売却をしようとする時には、まずは概算で売却可能な金額と必要経費の試算を行い、手元に残る費用を確認しておく必要があります。