子の配偶者など相続人でない人が親の面倒を見た

昨今は少なくなりつつあるのかもしれませんが、二世帯同居のご家庭などでは、義理の老親の面倒を専ら子の配偶者(主に奥様)が看ることが珍しくありません。
本当の親子のような関係を結ぶことが出来ればよいですが、実際には実の親子ではないが故の難しさや、他の実子との関係など気苦労が絶えないというのが実際のところではないでしょうか。
しかも、その様な献身をしたとしても、相続が発生すれば相続人は実子であり、子の配偶者は相続人ではないため一切相続分はありません。
寄与分という制度もありますが、今の法律では費やした労力に見合う対価を得ることはほぼ不可能なため、苦労が報われないという不満が溜まりやすくなります。
(2019年7月からの民法改正による「相続人以外御ものの貢献を考慮する制度」については下記をご参照ください)

こんなことが起きるかもしれません

1)配偶者の不満が夫婦関係に悪影響を与える

被相続人が生前に何の相続対策も行っていなければ、遺産分割協議においては子の配偶者は蚊帳の外に置かれます。
その貢献について配偶者が主張をしてくれ、他の相続人も理解をしてくれればよいですが、現実にはそのようにならないことも多く、夫婦関係に支障が生じることがあります。

2)自宅の売却

子の配偶者が義理の親の面倒を見るケースでは、同居あるいは二世帯住宅に居住しているケースが多いと思われます。
親に相続が発生した場合、その自宅(土地建物)が親名義であれば当然相続財産となりますが、その自宅をすんなりと同居の子が相続できるとは限りません。
遺言等が無い限り相続財産は相続人全員の遺産分割協議で分割されるからです。
親と同居していた自宅を相続する代わりに他の相続人から多額の代償金を求められたり、最悪の場合、自宅を売却して売却代金を遺産分割する換価分割となる可能性もあります。
換価分割となった場合、同居の子夫婦は住む家を失うことになりますので、非常につらい立場に追い込まれることになります。

3)遺言が兄弟姉妹間の感情に悪影響を与える

親が子の配偶者の献身に感謝し、遺言で財産の取得を指定することがあります。
そのことを良く思わない(理解しない)他の相続人がいる場合には、相続人同士の関係が悪くなることがあります。

対策

1)遺言

子の配偶者に対し財産面で感謝を伝えようとする場合には、遺言は必須です。
遺言は他の相続人の遺留分を侵害しない限り、原則として遺産分割協議に優先するからです。

2)意思疎通の必要性

日頃から、親の介護等にかかる負担等について子供達(相続人)が意識を共有しておく必要があります。
面倒を見ている方は時間的、体力的、金銭的に疲弊していても、離れている他の子たちは居住費が浮いて、自分の子供の世話も親に頼めるなど同居のメリットに目が行きがちです。
話しづらいことではありますが、親の世話について忌憚のない意見の交換を行い、日頃から意思疎通を図る必要があります。

3)遺言、エンディングノート

遺言における付言やエンディングノート、あるいは他の方法でも良いですが親の本音を遺しておくことは重要です。
それらは法律的な効力は持ちませんが、相続人の意識に訴えかける効果としては非常に大きなものがあります。

民法改正(相続人以外の者の貢献を考慮する法律)

2019年7月1日施行の民法改正により、相続人以外の親族が「被相続人に対して無償で療養監護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした」時には特別寄与料(金銭)を請求できるとされました。
従来、寄与分を主張できるのは相続人に限られていましたが、これを被相続人の親族まで範囲を広げた形となります。(これらを「特別寄与者」と言います)
特別寄与者は特別寄与料について協議が整わない場合には、家庭裁判所に請求を行うことが出来ますが、請求ができる期間は、「争族があったことを知った時から6ヶ月、あるいは相続開始から1年以内」となります。