朝日新聞の成年後見制度に関する連載記事です。
全10回のうち5回目の記事となります。
全体記事は最後に張り付けています。
今回のテーマは専門職の後見人への就任です。
後見制度は制度開始当初は親族後見人が中心でしたが、徐々に割合が下がり最近では7割以上が弁護士や司法書士などの専門職後見人となっています。
専門職の後見人への就任は費用の問題以外にも、家族の問題に他人が介在することへの抵抗感という側面があります。
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2月13日 第5回
1.タイトル
なぜ専門職の選任が多いの?
2.記事からの引用
1)(首都圏に住む男性の話として)認知症が進んだ妻の後見人になろうと考え、家庭裁判所の案内書を頼りに2、3カ月かけて自分で書類を作った。家裁で書類を提出すると、職員から、資産が高額なので第三者が後見人になる見込みだと告げられた。(非常に立腹)
2)親族が自ら後見人になりたいと望んでも、弁護士ら第三者が選ばれることは多い。(中略)財産が多かったり遺産分割など法的に難しい課題があったり、親族間で意見の対立がある場合などに専門職が選ばれることが多い
3)後見人は一度選任されると交代は難しく、金銭管理だけで生活面をほとんど見てくれないといった専門職への不満も多い。
4)どうしたら本人の生活を支え、家族も納得できる後見人を選べるのか。最高裁によると、昨年までに少なくとも6割の自治体と家裁の間で意見交換を始めて改善を模索中だ。
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親族後見人が減り、専門職の後見人が増えた最大の理由は「後見人による財産の不正利用」と思われます。
後見人は判断能力を失った本人に代わり法律行為を行うという絶大な権限を持ちますので、親族後見人による預貯金の使い込み等が頻発する事態になりました。
(後見制度の主旨が解されていなかった面もあるかと思います)
結果、後見人を選任する家庭裁判所としては選任責任の観点から、特に財産が多いご家庭や家族間の意見が対立しているご家庭の場合には、専門職後見人を選任する傾向が強くなりました。
しかし専門職が後見人に就任することは、後見制度の利用を躊躇させる原因にもなります。
主なものは以下のとおりです。
1)家族関係に他人が入り込むことへの不快感
2)専門職後見人は本人のことだけを考える責務であるため、家族全体にとって良いと考えられる財産管理を行わない(行えない)
3)報酬の負担(月額数万円を後見が終了するまで支払います)
4)財産管理に重きを置いて、身上監護面については家族のような愛情を持って行ってくれない(但し、後見人の仕事は段取りや環境づくりであって、そもそもヘルパーさんの様に具体的な介護をしてくれるものではないという点には注意が必要です)
しかも後見制度は申し立てを行った後は正当な理由がない限り取り下げは出来ません。
裁判所としては、誰が後見人になろうとも本人に後見が必要な状態に変わりがあるわけではないので、仮に申立人が自分が後見人になれないのだったら取り下げますと言われても認めるわけにはいかないからです。(正当な理由は裁判所が判断します)
また後見人は一度就任すると、健康上の理由などやむを得ない場合を除く退任できません。
後見制度は本人のためという大前提を守りつつ、家族全体が望む方向を向いていることが理想ですが、現在の後見制度にはそのような観点はありません。
後見制度を広く普及させるために超えなくてはならない壁ですが、有効な方策が見いだせていないのが現状です。
成年後見制度シリーズ全10回
「教えて!成年後見制度-1」
「教えて!成年後見制度-2」
「教えて!成年後見制度-3」
「教えて!成年後見制度-4」
「教えて!成年後見制度-5」
「教えて!成年後見制度-6」
「教えて!成年後見制度-7」
「教えて!成年後見制度-8」
「教えて!成年後見制度-9」
「教えて!成年後見制度-10」
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