高齢者の賃貸住宅契約

 

高齢者 賃貸住宅 契約

 

ご高齢の方が賃貸住宅を探す場合、通常の場合より困難が伴います。

この点については何となくそうだろうなという印象をお持ちの方が多いとは思いますが、具体的にどういうことなのかをお話ししてみたいと思います。

弊社でもご高齢の方のお部屋探し相談を受けることは少なくないのですが、苦戦する場合が少なくありません。

1.高齢者が賃貸のお部屋を借りづらい理由

1)家賃の支払い

家賃を支払うには収入が必要ですが、その財源が安定的に確保できているかという問題です。
仕事をされている方であれば当面の収入がありますので、その内容を申込書に書けばよいですが、無職の方の場合には年金額等を書く必要がありその金額が少ないと審査が厳しくなります。
また生活保護費を受給している方であればればかえって安定的な収入が確保できている状態ということにもなりますが、逆に言うとこれから生活保護を申請しますという方がお部屋探しをするとなると、生活保護申請が認められるかが不透明なので審査が難しくなります。

2)健康問題

ご高齢の方の場合、多かれ少なかれ健康面に不安があることが多いですが、相対的に突然死・孤独死の可能性が高いことは貸主にとってのリスクとなります。

3)片付け

歳をとると色々なことが億劫になり、徐々に片付けが出来なくなり、引いてはお部屋のごみ屋敷化につながりかねません。
これは年齢に関係ないという側面もありますが、一般的にモノが多すぎるお部屋は高齢の方によく見られる傾向です。

4)認知症

認知症等により意思能力を喪失すると法律行為が出来ません。これには家賃の支払いや更新契約の締結などが含まれます。
また話したことを忘れてしまう、話の内容を理解できない、怒りっぽい、会話がかみ合わないといった健全なコミュニケーションが取れない状態になると賃貸借関係が維持できなくなります。
結果として上で挙げた健康問題や片付け問題へとつながっていきます。

2.高齢者が賃貸物件借りるために必要なこと

1)収入

仕事をしていない場合、年金や株式からの配当など安定的な収入、あるいは家賃の支払いに十分な預貯金があることは非常に重要です。
先にも述べましたが生活保護費を受給する場合でも、現在「既に受給している」ということが重要になります。

2)連帯保証人

本人の収入を担保するものとして連帯保証人の存在が重要です。
連帯保証人は身内の方になってもらうのが原則ですが、その連帯保証人になる方にも安定した収入があることが前提となります。
連帯保証人は家賃のお支払いなどの債権債務関係において本人と全く同じ権利義務を負いますので、ある意味本人以上に属性が重視される面もあります。
また収入面だけでなく連帯保証人は本人の身の回りの世話についても常に目が届く状態にあるということも本人の健康面のケアや、いざという時の諸手続きを行うためにも重要です。
よく連帯保証人がいないので、賃貸保証会社を利用して契約したいというお申し出を頂きますが、昨今は賃貸保証会社が連帯保証人がいないお客様の保証を受け付けないというケースも多く、特にご高齢者の方のご契約においてはその傾向が顕著です。

3)意思能力

言うまでもなく本人と円滑なコミュニケーションが取れることが契約の前提となります。
意思能力はあっても耳が遠くて会話がおぼつかないという様なことがあると、契約が厳しくなります。

4)精神疾患が無い

生活保護費の需給理由が精神疾患という場合があります。うつ病などが該当するのですが、この場合賃貸保証会社の審査が通らないということが非常に多いです。
また保証会社の審査が通っても貸主からNGが出ることもあり得ます。
精神疾患が無いということも契約の前提と考えて頂いてよいかと思います。

 

3.高齢者が賃貸のお部屋を借りようとする場合

上記の3)コミュニケーション能力があること、4)の精神疾患が無いこと、この2つが大前提となります。
この点がクリアできないと残念ながら賃貸物件を契約することは難しいと言わざるをえません。

また2)の親身になって身の回りの世話をしてくれる身内の存在、というのは現実的な必要条件といえます。
要するに高齢者の方の単独での審査通過は事実上難しいことが多く、信頼のおけるお身内の方(連帯保証人を兼ねることが多い)の存在が非常に重要になってきます。
この場合、具体的には子供などが近くに住んでいて週に何回かは電話や訪問で安否を確認できる関係性などが典型的な例になろうかと思いますが、なかなかハードルが高い部分でもあります。

不動産業者としては出来るだけの協力はしたいと考えておりますが、昨今は保証会社の審査が通らない限りは賃貸借契約を結ぶことは出来ず、その点について不動産業者が出来ることは本人の能力やサポート体制を過不足なく伝えるということくらいで、審査の決定過程への関与は一切できません。

建物老朽化による立ち退きなど、高齢の方がやむを得ず引っ越しをせざるを得ないケースがありますが、まずはこれらの条件をもとに賃貸借契約の締結可否(可能性)を判断していただきたいと思います。
またこの点について行政の有効なフォローは残念ながら期待できません。
我々不動産業者は各宅建協会が窓口となって行政と連携して高齢者などのお部屋探しに協力するという関係を作っていますが、前述のとおり不動産業者にできることにも限界があります。

率直に言って明確な解決策もなく悩ましいのですが、これは今後ますますクローズアップされてくる非常に深刻な社会問題だと思います。

 

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