持ち家派?賃貸派?

持ち家派?賃貸派?

家を買って住むのか借りて住むのか?

言うまでもなく住むところは重要ですので、家を買うか買わないかの判断はその後の人生設計にとっても非常に大きな影響を与える人生の一大テーマです。

それ故、自分が持ち家派か賃貸派かということは度々テーマになりますし、実際に私もその質問をされたことは何度もあります。

ただそんなときの私の答えは決まっていて、

「いつでも家を買える経済力があるのなら好きな方を選べば良いと思いますよ」

というものです。

持ち家であれ賃貸であれ、家をめぐる最大のリスクは

住むところが無くなること

というのは多くの方に同意してもらえると思うのですが、賃貸の場合はそのリスクがより大きいです。

もちろん持ち家でもそのリスクが無いわけではありません。
自宅がローンや税金の滞納により競売にかかれば家を失いますし、災害等で家が無くなるということも当然あります。

ただ賃貸物件は他人のものなので、貸主の都合で退去を求められることがあるという点が大きく異なります。
持ち家でローンが払えなくなることと賃料が払えなくなることは経済的な理由で住む場所を失うという点ではほぼ同義だと思いますし、災害のリスクも持ち家と賃貸で大きな違いはないと思います。
しかし他人の意向で立ち退きを迫られるというのは主に賃貸だけのリスクで、率直に言ってこのリスクは可能性として決して小さくはありません。
例えば賃貸物件があって物件としての競争力や建物の維持管理コストという観点でから見た商品としての寿命がおおむね50から60年くらいだとすると、仮に30歳で築10年の物件を借りて住み続けたとすると、70歳から80歳ぐらいのタイミングで建物取り壊しによる退去のお願いをされる可能性が高いです。

その時に

1.賃貸借における借主の権利は非常に強いので断固退去を拒否する(法律的には可能)

2.素直に立ち退きに応じる(大抵費用は貸主が負担します)

のどちらを選ぶにしても、ハードルは高いです。

まず1はその気力があるのかという問題です。
多くの高齢者の場合、そこで対抗するだけの体力と気力がないことが多いです。

想像してもらえるとわかりますが、自分が70、80になった時に入れ替わり立ち替わり「出て行ってください」と言われたら普通の人なら精神が参ります。
しかもお願いをしてくるのは長年付き合ってきた貸主ではなく、その子供や解体して建て替えを行う事業者(不動産業者など)であることが多いのでそもそもエネルギーが違います。
「出て行ってくれないと私たちも困るんです」というスタンスで来ますし、この件についてのゴールは基本的に退去以外にありません。
要するに退去に応じるまでずーっと要請が続きます。
私の知る範囲ですが、建物老朽化による退去要請を強硬に拒める人は非常に少ないのが現実です。

次に2ですが、素直に退去に応じたからと言って高齢者の賃貸物件探しは非常に困難を伴います。
主に収入面と健康面が大きな理由ですが、仮に貯金はあるといっても年齢でNGというケースは少なくないです。
不動産屋に出向き部屋探しをすると、年齢だけを理由に断ると色々と問題が出るので何等か別の理由をつけて断るとか、物件を紹介しないかあるいは少しだけ紹介して後は紹介をしないといった方法で体よく断られることが多いかもしれません。

お客様にはハッキリとは言いませんが、業者間では「高齢者はダメなんです」、「生活保護の方はダメなんです」、「外国人はダメなんです」、「水商売の方はダメなんです」という会話が普通に交わされる世界です。

こういうことを言うと目を吊り上げる方がいるかもしれませんが、貸主にしても自分の大切な資産を誰に貸すのかということは非常に重要な問題です。
高齢の方に部屋を貸して孤独死や自死をされたり、テレビでやっているようなゴミ屋敷にでもされたら本当に悲劇で、その部屋の原状回復費用や募集賃料の下落はダイレクトに貸主の収入に影響してきます。
貸主の立場からするとお金が支払えるということだけがすべてではありませんし、それを無視して無理にハンコを押させることは誰にもできません。
よく言われる「これから人口が減るから賃貸の部屋が余り誰でも借りやすくなる」という理屈は確かに一理ありますし、無いとは言えませんが必ずそうなるとも断言できません。
そうならなかったときにどうしますか?というプランBが手元に必要です。

そこで話しを戻しますが、私が持ち家派か賃貸派かという観点で最重要視するのは、繰り返しますが賃貸物件を借りられなくなった時に、住む場所を確保できるだけの経済力やそれ以外の手段はありますかということです。

お金さえあれば賃貸物件を借りられなくても家を買うことは可能です。
ローンは組めませんが現金一括払いであれば、意思能力さえしっかりしていれば何歳になっても家は買えます。
というかむしろ良いお客様ですので、賃貸を探してる時には冷たかった不動産業者がくるっと手の平を返すかもしれません。
あるいは田舎に相続した家があって、いざとなればそこに住むというのも個人的なセーフティネットとしては有効です。

持ち家派か賃貸派かの論争でよくテーマになる持ち家は資産になるとか、生涯にかかる経費がどっちが多い(少ない)という観点は無駄ではないですけど、これは物件や個人の属性、将来性によって大きく内容が変わりますので、観点としては良いですけれどもそれが決め手かと言われれば私は違うと思います。
強いて言えば、家賃はいくら支払っても自分のものにはならないけど持ち家はそうではないという理屈は、持ち家が資産になるという観点からは過度な期待はできませんが、少なくとも住むところを確実に確保できている点では非常に有効だと思います。

まずは住む場所を失わないリスク。
再々度繰り返しますが持ち家派か賃貸派を判断する上で、これが最重要の観点だと思います。
(異論、反論はあるかと思いますが、個人的な意見です)

 

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