【家族信託⑨】家族信託組成に関わるコストと税務

申し訳ございません。
すっかり間が空いてしまいましたが、家族信託シリーズの再開です。

家族信託シリーズ第9弾は「家族信託組成にかかるコストと税務」についてです。

 

1.家族信託組成に関わるコスト

家族信託は成年後見制度とは異なり基本的には家族だけで完結できる制度ですが、最初の仕組み作りについては専門家の手助けが不可欠です。
家族信託を組成するにあたっての主な費用には次のものがあります。

 

1)コンサルタント費用

家族信託はご家族ごとのオーダーメードの対策ですので、目的や財産によって内容は変わります。

ご家族の目的に即した法律的、税務的に問題の無い家族信託を組むためには専門家の手助けが不可欠です。

<目安>

信託財産の価額 コンサルティング費用(税別)
1億円未満 財産の1%
1億円超の部分 財産価額0.5%

 

一般的にこの価格にはご家族へのヒアリング、施策の検討、家族信託の提案・設計、信託契約書・遺言書等の文案作成、公正証書作成時の立会いなどが含まれます。

 

2)公正証書契約書の作成費用

家族信託においては公正証書による契約書の作成が実務上必須となります。

公正証書の作成費用も財産の価額によって細かく分かれていますが、主な価格帯は次の通りです。

 

信託財産の価額 手数料(非課税)
1000万円超~3000万円 23,000円
3000万円超~5000万円 29,000円
5000万円超~1億円 43,000円
1億円超~3億円 1億円ごとに13,000円

 

これ以外に日当や出張費などの経費が掛かります。

 

3)登記費用

不動産を信託する場合、委託者から受託者への所有権移転登記と信託登記が必要になります。
登記費用には登録免許税という税金と登記業務を行う司法書士への報酬がありますが、信託する不動産の価額が大きく、不動産の数が多ければ多いほど登記費用は高額になります。

 

目安として固定資産税評価額の1~2%

 

2.家族信託の税務

家族信託が財産を取り扱う仕組みである以上、税務との関係は避けては通れません。

前項の通り信託を組む際にも登録免許税という税金がかかりますし、信託期間中にも税金はかかります。

但し、信託開始以降は家族信託だからかかる税金というものはなく、基本的にはご自身で財産を所有あるいは処分した場合と同様の課税がなされます。

家族信託における主な税金には次のようなものが挙げられます。
(これらの税金は信託財産の中から支払われることになります)

 

1)固定資産税

不動産など固定資産を所有しているときにかかる税金です。

 

2)所得税

賃貸アパートの家賃など信託財産から生じる収入は所得税の対象となります。

 

3)譲渡所得税

不動産や株式などの信託財産を売却した際の所得に課税される税金です。
また受益者が受益権を別の人に譲渡した場合には、その所得にも譲渡所得税が課税されます。

 

4)贈与税

受益権が対価を伴わずに譲渡されると贈与税の対象となります。

具体的には信託の途中での受益者の変更(受益権の譲渡)や受益者が存命であるにもかかわらず信託が終了した際の受益者以外の帰属権利者には贈与税が課税されることになります。
一般に贈与税は高額になることが多いので、家族信託の仕組みでは贈与税の課税がされることがないよう信託を組成することが基本となります。

 

5)相続税

受益者の死亡により信託が終了した時には信託財産が相続税の対象となります。また信託が終了せずに受益権が第二受益者に承継された場合にも受益権が相続税の対象となります。

 

家族信託は家族で関係を完結できるため、後見制度に比べるとランニングコストの面でも融通が効きやすいという特長があります。
しかし各ご家庭の事情に即した家族信託スキームの構築や、財産を保有・処分あるいは相続が起きた際の税務については専門家の手助けや税務当局からの課税が避けられません。

家族信託を行うにしても一定のコストがかかるという点にはご留意ください。

 

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