【家族信託①】家族信託と成年後見制度

認知症等により意思能力を失ってしまうと自身が当事者となって法律行為をすることが出来なくなってしまいます。
このことは相続という観点で見た時にも、財産の凍結により相続対策が一切出来なくなるという問題を生みますが、それ以外にも自宅を売却してその資金をもって施設に入所しようという様なときにも手続きができず大変な苦労をすることにもなりかねません。
その様な時の備えとして近年脚光を浴びているのが「家族信託」という制度です。
弊社では日本有数の家族信託の取り扱い実績を誇る「司法書士法人トリニティグループ」様と提携を結ばせて頂いたことを機会に、人が意思能力を失ってしまうことへの備えについてまとめた小冊子を作成しようと考えています。
その内容はいずれ冊子にまとめて店頭で配布することを検討していますが、先行して当ブログでもその内容を公開をさせていただこうと思います。
今日から概ね10回程度のシリーズになる見込みですので、宜しくお願い申し上げます。

1.初めに

近年、認知症等により人が意思能力を失うことへの備えとして、「家族信託」という制度が注目を浴びています。
高齢の父などが意思能力を失ってしまうと、財産が凍結し自身を当事者とする法律行為が出来なくなり、結果として銀行との取引(預金の引き出しや口座の解約等)や不動産の処分、引いては生前贈与や賃貸アパートの建築といった相続対策が行えなくなるといった弊害が生じます。
この点について、従来の成年後見制度には法律上の制約があり柔軟な対応をすることが難しかったのですが、家族信託では意思能力を失った本人に代わり家族等が法律行為を行うことで、本人の意向を汲んだ新しい財産管理の形が検討できるようになりました。

2.成年後見制度の限界

従来、意思能力を失った人が法律行為をするために採れる方法は成年後見制度しかありませんでした。
しかし成年後見制度は家庭裁判所の監督のもと、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人のために法律行為をする制度で、本人の権利や財産を守ることに主眼が置かれているため、施設入所費用を用意するための自宅売却や家族全体を見据えた相続対策などは行いづらいという難点がありました。
(任意後見制度においては後見人の選任は本人が行いますが、後見監督人が選任され、家庭裁判所の管理下に置かれることに違いはありません)

3.家族信託とは

これに対し家族信託は金銭や不動産などの財産について、「信託契約」に基づき本人から委託された家族などが、本人が意思能力を失った後でも本人に代わり財産の管理・運用を行うことが可能になる制度です。
従来の成年後見制度がある意味本人のためだけに後見人の判断で財産の保全や維持を行うのに対し、家族信託は本人の意向が反映された信託契約に基づきより家族等が柔軟に財産の管理や運用が行えるという点が大きく異なります。
また名前の通り家族だけで手続きが完結できるため、家庭裁判所に選任される弁護士や司法書士といった専門職後見人(第三者)の干渉が無いことも成年後見制度と比べて使い勝手が良い点とされています。
さらに家族信託では信託契約の中で財産の承継者についても定めることができるため(実質的な遺産分割)、遺言代用的な使い方が出来ることもメリットとして挙げることが出来ます。

家族信託の3大メリット

 

<成年後見制度と家族信託の仕組みの違い>

成年後見制度と家族信託の仕組みの違い

 

 

作成する冊子では成年後見制度についてもまとめているのですが、このブログでは家族信託の内容を先にアップさせて頂きます。

成年後見制度については以前にもこのブログで詳しくまとめさせていただきましたが、制度としては本人の権利や財産を守るという点を厳格に運用することに主眼が置かれています。
もしこの部分がいい加減では本人の意向を無視して成年後見人が好き勝手に法律行為をしてしまい、結果的に本人に損害を与えてしまう恐れがありますので、成年後見制度においては主に家庭裁判所と弁護士や司法書士といった専門職後見人によって制度が支えられています。

しかしその結果として、成年後見制度では家族全体を見据えた柔軟な財産の管理や処分ができないということや後見人に支払う報酬の負担が重いというマイナス面もクローズアップされるようになってしまいました。
それに対し、家族信託は後見制度のマイナス面を補いながら本人の財産を守りかつ積極的に活用していこうという制度です。

次回以降では家族信託の主たる特徴をまとめていきたいと思います。

 

「教えて!成年後見制度(10回シリーズ)」

はこちらからご覧ください。

 

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