4月1日から民法改正【瑕疵担保責任→契約不適合責任】

コロナ騒ぎであまり注目されていませんが、4月1日から民法が一部改正され施行されています。
不動産取引や相続にも大きく影響する内容なのですが、4月1日にぺラ見をした限りでは日経新聞と朝日新聞の朝刊では触れられていないようでした。
そこで今回の民法改正が不動産取引や相続に関して具体的にどのように変わるのかを見ていきたいと思うのですが、とは言っても契約書の書き方ひとつとっても一つの講座が出来るくらい民法改正はテーマとして深いので、ここは逆に概要についてサラッと触れる程度でまとめてみたいと思います。
このブログ全般に言えることでもあるのですが、あくまでもざっくりした内容であるということをご理解いただき、より詳しい専門家の方などのサイトなり本なりを読む際の基礎知識程度に考えて頂けると幸いです。
今回は不動産売買取引で「瑕疵担保責任」が無くなり、「契約不適合責任」という内容に変わったというお話しです。

1.瑕疵担保責任と契約不適合責任

不動産売買では「瑕疵担保責任」がなくなり「契約不適合責任」という名称に変わりました。
今回の民法改正における不動産取引関連では非常に大きな改正となります。

2.概要

瑕疵とは「傷」という意味で、不動産の瑕疵と言えば建物のシロアリや雨漏り、土地の地中埋設物、あるいは権利の侵害などが該当します。
不動産取引では売主が売却した不動産についてこれらの瑕疵があることを知らなかった場合でも、売主は買主から損害の賠償や契約解除をされるリスクを負うとされており、つまりは知らないで売ったんだから責任はなしね、というのはダメですよと言うのが瑕疵担保責任でした。
逆に言うと瑕疵の存在が明らかであった時には売主は責任を負わないわけで、瑕疵担保責任とは社会通念上、これはダメでしょと言う「キズ」が取引不動産に隠れていたときに売主が負う責任ということになります。
(ですので取引後に問題が生じた時には「知っていた」、「知らなかった」が問題となりやすい傾向がありました)

また、瑕疵担保責任においては「目的物を引き渡す」という義務は履行していますので、債務不履行としての追求ではなく、対象不動産が通常有するとされる品質や性能を欠くということが問題であるとされていました。
つまり判断基準が「通常有するとされる・・・」というあいまいなもので、この部分も認識の違いによりトラブルになる原因となっていました。

一方、今回施行された「契約不適合責任」は瑕疵が隠れていたとか買主が知っていたかどうかは関係なく、契約でこういう内容の不動産を引き渡しますよと取り決めて、それに合致していなければ売主は責任を負うという決まりです。
責任には瑕疵担保と同様、損害賠償、契約解除が認められていますが、そのほかに修補責任(本来の形にして欲しいという請求)や代金減額請求が可能とされています。

つまり今後の不動産取引においては、従来以上に売買対象となる不動産の内容について詳しく説明する必要があるようになったということで、例えば実際は雨漏りがあるのにそのことを契約書に明記していなければ、それは「本来、雨漏りの無い建物を引き渡す」という契約に違反していることになり、それを知っていた知らなかったとか社会通念上の品質を欠くといった基準ではなく、契約違反として買主は売主に上記の様な請求を出来るということになります。

これにより実務上は契約書に物件の内容についてひとつずつ項目を明記する必要が生じるため売主も大変になると言えますが、一方で買主も楽になったのかいえばこれは一概には言えないような気もします。
従来は契約書に書いていなくても「社会通念上これはダメでしょう」ということで請求が出来たものが、今後は契約書に書いてあるかどうかが全てなのでよくよく内容を理解していないと「契約書に書いてありますよ」と言われ兼ねないということが出てくるかもしれません。

3.任意規定

契約不適合責任も瑕疵担保責任と同様も任意規定です。
これがどういうことかと言うと、売主・買主が合意して契約不適合責任を適用しない旨の取り決めをしたときはその特約が有効ということで、これは従来の瑕疵担保責任でも同様でした。
例えば老朽化した古家が付いた土地を売買する場合、建物はそもそも住める状態ではないので「契約不適合責任」の対象にはなりませんというような取り決めが可能ということです。
尚、「契約不適合責任」を請求できる期間は法律上は「不具合を知った時から1年以内」とされていますが、実際には売主もいつまでたっても契約不適合責任から逃れられないのでは困りますので、引き渡し後3カ月以内は契約不適合責任を負うといった特約が定められることが多いと思われ、これも従来の瑕疵担保責任と同様です。
(但し、売主が宅建業者である場合は免責にすることはできず、最低2年間は責任を負う必要があります)

 

いずれにしても新民法では契約の内容が判断基準になったということで、従来にも増して契約書に記載する内容の精査が必要になると共に、免責特約や容認事項(例えば「雨漏りが発生していますが、それを見込んでこの金額で契約を結んだのですよ」といった内容)の記載が非常に重要になると考えられます。

基本的には今回の改正は売主の責任が重くなったと解釈されることが多いようですが、個人的には不動産の事前調査にかかる費用負担などが売主の負担増となる一方で、そこまでは調査ができないので「契約不適合免責」という契約も増えるのではないかと思っています。
また物件調査が大変になる一方、我々不動産会社からすると物件の引き渡し後のトラブルは少なくなるのか、あるいは調査漏れがあってより問題が生じやすくなるのかは分かりません。
インスペクション(建物状況調査)など専門の物件調査会社の出番は増えるものと予想されます。

いずれにしても動き出した新民法に注意して取引を進めたいと思います。

 

 

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