孤独死 賃貸経営のリスク

貸主として賃貸経営をすることのリスクは様々ありますが、その一つに入居者の孤独死という問題があります。

 

(写真はイメージです)

汚部屋(おべや)

 

孤独死というと一人で居住していた高齢者の方がお部屋で亡くなってしまい発見に時間がかかってしまうといった例が思い浮かびますが、実際にはお部屋で亡くなられなくても部屋で倒れてそのまま病院に運ばれて亡くなってしまうといったことも少なくなく、これも賃貸経営上の孤独死と言ってよいと思います。

借りている方(=賃借人)が死亡しても賃貸借契約は自動的に終了することはなく、賃借権が相続財産となり相続人に引き継がれます。
これを孤独死という切り口で見ると「何故本人が死亡しているのに契約が終わらないんだ!?」と考えられがちですが、例えば孤独死ではなく同居の家族がいる場合などには、契約当事者が死亡したからと言って賃貸借契約が自動終了していたのでは同居家族の生活が不安定になってしまいますので「賃借人の死亡 ≠ 賃貸借契約の終了」とならないことが法律で定められているのは極めて妥当だと思います。

一方、現実の孤独死の現場、つまり残されたお部屋の片付けは決して楽な作業ではありません。
往々にしてお部屋の状態は整理がなされていないことが多く、単に散らかっているというだけであればまだ良いのですが、時には衛生面でも非常に問題のある状態であることが少なくありません。
その様な場合を含め、お部屋の片付けを相続人の方などが行うことは非常に負担が大きく、通常は専門の業者に依頼をします。
費用は見積りに拠りますが数十万円単位になることが多いです。
特に衛生的な問題がある場合には「特殊清掃」と言って、単なる片付けとはまた違うカテゴリーでの片付けになってしまうため、さらに費用は高くなります。

そういう現場を見ていて思うのは、この様ないわゆる「汚れ仕事」を請け負うことの大変さです。
結局のところサービスというのは「自分に出来ない(したくない)ことを人に頼む」ということだと思うのですが、この様なお仕事はその最たるものだとつくづく思います。
費用だけを見れば決して安くはないと思いますが、時間的、体力的、技術的、精神的など様々な理由で一般の方ではできないことを請け負うわけですので全くもって大変な仕事だなぁと、私は横にいるだけですが思うことがしばしばです。
(正直言って横にいるだけで結構精神的に”くる”現場も少なくないです)

但し、この様な清掃業務は頼む側もよく分からない、あまり関わりたくないという理由で、引っ越し業者を選ぶときの様に合い見積もりを取って比較検討してといったことをしない傾向があります。
ですので信頼できる業者に依頼、あるいは紹介をしてもらうということも孤独死などの片付けの実務においては非常に重要なこととなります。
(もし誰に依頼して良いかわからないという時は弊社にご連絡ください)

ところでこの記事の書き出しは「賃貸経営リスク」というものでした。
孤独死あるいはそれに近い状況が発生してしまうと、一義的には相続人の方が賃借権を相続しますので賃借人の義務を引き継ぐことになります。
具体的にはお部屋の片付け(原状回復)と賃料等の支払い義務を相続人が亡くなった本人に代わり履行することになります。
但し、原状回復と言っても居住用物件の場合、自然損耗は借主に請求できないという原則がありますので、貸主が相続人の方にお部屋の修復費用として請求できる範囲は限られます。
当然と言えば当然なのですが孤独死すること自体は契約で禁止できることではなく、原則として損害賠償の対象にもなりませんので、結果、片付けは終わっても「そのままでは貸せないお部屋」のリフォームにかかる費用の多くは貸主の負担となってしまうことが多いです。
孤独死があったり、特殊清掃が必要なくらい酷い状態であったお部屋をリフォームすると、これもお部屋の広さにもよりますが少なくとも数十万円はかかります。
これは貸主(=大家さん)にとっても重い負担です。

長年住んでいた方が年を取って高齢者になったという場合には、貸主もその分長期にわたり賃料を頂いているわけですので、最後に大きな費用が掛かってもそれは仕方ないとも言えますが、つい最近入居した方が孤独死をして多額の費用が掛かってしまうとなると場合によっては貰った賃料総額よりも費用が掛かってしまうこともあり得ます。
高齢者の方がお部屋を探す時に、貸主が契約を嫌がるのは決して理由がないわけではありません。
道義的、倫理的なお話しはあるにしても、貸主の立場になれば責めることはできないなと個人的には思っています。

冒頭、孤独死の賃貸経営リスクという書き方をしましたが、この言葉には高齢者が一人で住む賃貸物件の貸主の賃貸経営リスクという意味はもちろんのこと、高齢単身者の相続人が負うリスク、賃貸物件に住む高齢単身者自身のリスク(ある日引っ越しさなくてはならなくなるなど)といった様々な問題点も背景にはあります。

高齢単身者と賃貸物件に関わる問題は言うまでもなく社会の問題と言えると思いますが、現場で仕事をしていると身に染みて感じることが多いです。
なんでも行政に頼るというのもそれでよいのか?という気になりますが、民間で請け負うにはあまりにも負担の大きい問題の様にも思います。
話しは逸れますが、よく話のネタで将来は持ち家派か賃貸派かということが比較されることがありますが、個人的にはいつでも家を買えるくらいの経済力がある人を除けば、基本は持ち家一択。
高齢者が賃貸住宅に住むことを貸主が嫌がる以上、借主にも賃貸住宅に住み続けることには大きなリスクがあります。
少なくとも高齢になってから賃貸のお部屋を探そうとすると、非常に高いハードルがあるということは理解をしておいた方が良いと思います。
賃貸は貸すもリスク借りるもリスク、この仕事をしていると痛感します。

 

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