相続で引き継ぐ財産と引き継がない財産を見極める

以前ご相談のあった事例です。

お父様がお亡くなりになり息子さんが唯一の相続人ということで、ご相談はその息子さんから受けました。
相続人が自分しかいないという点については最終的には戸籍を追って確認する必要がありますが、普通はご相談の時点ではそこまではしません。
相続人が一人だけということは遺産分割協議を行う必要がありませんので、相続手続きそのものは簡単になるはずなのですが・・

財産の生前整理

 

ご相談の内容はお父様から相続した土地を売却したいというものでした。
関東某県にお父様が所有していた土地がありそれを売却したいという意向ですが、その内容がなかなか厳しいものでした。

曰く、相続人である自分はその土地を見たことが無く正確な場所がわからない、また今どのような状態になっているのかもわからず、土地の権利証や登記簿などの書類も見たことが無いというものでした。
もちろん相続の手続きもしていないので、名義は亡くなったお父様のままです。

GoogleMapで取りあえずこの辺?という場所は教えて貰いましたが、そもそも場所が特定できません。
しかもかなり辺鄙な場所で、周辺の募集事例を見てもそれほど高い金額で取引はされていません。
不動産業者である私が現地まで出向いて調査をすればそれなりに概要はわかると思いますが、それでも売主様には名義変更や測量などの手続きを行ってもらう必要がありますし、当然相続登記をして所有者変更の手続きもする必要があります。

ただそういう手続きを進めて頂いたところで売却可能な金額は高くなく、おそらく売主様は測量代や仲介手数料を支払えば足が出ますし、我々不動産業者もわざわざ他県まで出向いて販売をするだけの旨味はありません。
お隣の方がこの土地を欲しがっているといった事情でもない限りは、一から物件化して買い手を探すのは売主様にとっても我々不動産業者にとってもあまりにも費用対効果が悪すぎる物件となってしまいます。

つまりこの相続された土地は近年まさに言われる「負動産(ふどうさん)」そのもので、持っていても固定資産税や管理コストのほか管理責任も負うことになる一方で、売ったとしても赤字という煮ても焼いても食べられない土地となってしまっています。

相続ではこのように価値のない財産が相続されることもあり、相続人としてもこんな土地を相続させられても困るというのが本音だと思います。
このお客様には、「残念ですが場所すらわからない他県の土地では弊社では売却をお手伝いすることは難しいです」とお伝えしたところ連絡が途絶えてしまいましたが、今でも扱いに困っているのではないかなぁとときどき思い出します。
地元の業者であれば取り扱ってくれるかもしれませんが、それにしても相続する土地の場所がどこかぐらいは分かっていないと相談すらもままなりません。
我々不動産業者が間に入って土地は売るとなれば、それなりに詳しい調査をしますし仲介責任も生じます。
よく分からない土地があるけど売れますか?と言われても、よほど商品価値が高ければ別ですがそうでないとどこまで本気で取り組んで良いのか正直判断に迷います。

この話の教訓は、亡くなる方(被相続人)が生前に財産を整理しておく大切さだと思います。
原則として相続人は言われなければ被相続人の財産のことは分かりません。
今ある財産を相続人にそのまま残すとどのようなことが起きるのか?ということに思いを馳せ、被相続人が自身の責任で問題になりそうな財産を生前に処分しておくということが重要になります。

くだんの土地もどういう事情でお父様が取得したのかは分かりませんが、お父様が生前のうちに赤字であっても処分をしてくれていればこのような問題は起きずに済みました。

相続対策では次の世代に引き継ぐ財産と引き継がない財産の見極めがとても重要で、それが相続人の負担軽減にも繋がるという点をご理解ください。

 

関連記事は右のカテゴリーか下のタグよりお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA