マイホームの売却にかかる費用

生活の基盤であるマイホーム。
そのマイホームを売却するということは人生の一大事と言えますが、その場合の最大の関心ごとはとどのつまり手元には一体いくらのお金が残るの?ということだと思います。

マイホーム売却

 

手元に残るお金を考える場合、まずはいくらで売却が出来るのか?という問題があります。
最初の売り出し価格については周辺相場などを勘案して不動産業者と相談の上決めることが多いですが、最終的には値段の交渉などを経て売主・買主双方が折り合った価格で売買金額が決まることになります。
しかし多くの方が理解している通り、売れた金額=手元に残る金額ではありません。
不動産の売却には様々な経費が掛かるため、当然手元に残る金額は売却した金額から売却にかかる経費を差し引いた金額となります。
実際にマイホームを売却しようというご相談をお受けした時にも、売却コストをあまり理解していなかったり、逆に必要以上にコストがかかると思いこんでいたりと手残り金額は意外と見えない部分でもあるので注意が必要です。

1.不動産の売却にかかる費用

不動産の売却に当たっては主に次のような費用が掛かります。
まずは項目の整理してみたいと思います。

①土地の測量費
②仲介手数料
③印紙代
④登記費用(抵当権抹消・司法書士報酬)
⑤インスペクション(建物状況調査)
⑥その他費用(建物解体費用、地質調査費、土壌改良費など)
⑦譲渡所得に対する税金

2.土地の測量費

土地の測量費というのは、売却する土地の境界を確定して正確な面積を測量することを指します。
土地を購入する方からすると、土地を買ってから隣地所有者と境界紛争が生じても困るわけで、購入する前段階で境界と面積を確定しておいてほしいと考えるのは当然のことです。
この場合に注意が必要なのは、境界の確定とは隣地との境界に境界杭があるとか、隣地所有者とはこの塀のところが境界だと合意しているといったことだけでは不十分で、隣地所有者とこのポイントとこのポイント(これは必ずしも境界杭がある場所とは一致しないこともあります)を結んだ線が境界線であるということを合意し、その内容についてお互いに印鑑をついて確認し合う必要があるという点にあります。
確定測量は土地家屋調査士という国家資格を持った方が行い、確定測量図という書面を作成して、それをもって境界が確定するということになります。

3.仲介手数料

仲介手数料は不動産業者に支払う売買契約締結の報酬です。
これはあくまでも契約が成立した時に支払い義務が生じる経費です。
不動産を売却しようとする場合、必ずしも不動産業者に依頼をしなくてはならないという決まりはありませんが、不動産の売却には専門的な知識が必要で多くの場合不動産業者に売却の手続きを依頼することになります。
通常、仲介手数料は

(売却価格×3%+6万円)+消費税

という式で計算をします。
法律上はこれが売主・買主がそれぞれ支払う仲介手数料の上限とされていますので、これを超えて仲介手数料を請求をされることはありません。
またこれより少ない仲介手数料であっても問題はありませんが、不動産業者がそれでお仕事を受けるかどうかは分かりません。
仲介手数料をいくらにするのかということについては売却活動を開始する前に双方で合意をしておく必要があります。(通常上限の手数料となることが多いです)

4.印紙代

不動産の譲渡に係る契約書を締結した時には印紙税という税金が課税されます。
印紙とは売買契約書に貼付する切手の様なもので、印紙を契約書に貼付して割印をすると額面金額の納税(印紙税)がなされたことになります。
印紙税の額は売買価格によって異なり、主な売買金額の価格帯においては

  • 500万円超 ~1000万円以下 5千円
  • 1000万円超~5000万円以下 1万円
  • 5000万円超~1億円以下    3万円
  • 1億円超   ~5億円以下    6万円

の印紙税が、契約書1通につき必要になります。
通常は売主・買主がそれぞれ自身が最終的に保管する売買契約書に貼付する印紙代を負担します。

5.登記費用

売買契約が成立し不動産の所有権が移転すると通常は所有権移転登記を行います。
所有権移転登記にかかる費用は買主が負担しますが、売却する不動産に抵当権などの権利が登記されている場合には、売主の責任でそれらの権利を売却時までに抹消する必要があり、それらの登記抹消費用は売主の負担となります。
登記費用には登記手続きをする司法書士への報酬と、登記手続きをするにあたっての登録免許税という税金が必要になります。

6.インスペクション(建物状況調査)

インスペクションとは中古建物の状態を第三者である専門家に診断してもらう制度です。
調査の対象となる建物の部分は、屋根、外壁、基礎などの躯体部分と、開口部や排水管、屋根、外壁などの雨水の進入を防止する部分となります。
これは中古住宅の流通促進を図るために創設された制度で、実施が義務化されているわけではなく、希望をすれば売主・買主のどちらが行っても良いとされています。(買主が購入前に行おうとする場合には当然売主の許可が必要になります)

7.その他

それ以外にかかる費用としては、「建物解体費用」、「地質調査費」、「土壌改良費用」などが挙げられます。
建物の老朽化が著しく解体して更地にしたほうが高く売れると判断した場合や、以前の土地の使用用途から土壌汚染が疑われる場合などにはこれらの費用が掛かります。

8.譲渡所得に対する税金

一般の方が不動産を売却したときにかかる費用で一番わかりづらいのが税金の部分かもしれません。
よく不動産を売却すると税金がかかるんでしょう?と聞かれますが、不動産の譲渡所得税は売れば必ずかかる税金という訳ではありません。
売買価格がおなじ3000万円であっても数百万円の税金がかかるることもあれば、1円もかからないこともあります。
これは不動産の種類や所有期間、誰が売るのかということによって控除額や税率が変わることによるものですので、いわばケースバイケースということになります。
ですので「お友達が不動産を売った時にいくらの税金がかかった」という話しはあまり参考にはなりませんので、やはり専門家に相談して欲しいと思います。

具体的には、マイホーム売却時の譲渡所得税は

売却した価格-(その不動産を取得した価格※1)-(上で書いた①~⑥の経費)-(特別控除3000万円※2)=譲渡所得

譲渡所得 × 税率(※3)

で計算をします。

※1
「その不動産を取得した価格」はその不動産を購入したときの価格を指しますが、建物は減価償却しますので、買ったそのままの価格ではありません。
またそもそも購入した価格がわからないあるいは相続などで取得し購入していない、ということもあります。
そういう時には「売却した価格 × 5%」を取得費として計算することが出来ます。

※2
「特別控除の3000万円」はマイホームを売った時に認められる特別控除です。
要するにマイホームを売却するということは売主にとってはそれまでの生活の基盤を失うということであり、重い譲渡所得税を課すことを回避するための特別な控除です。
マイホームを売却した場合には、この3000万円控除によって譲渡所得を圧縮することが出来るため比較的税負担が軽くなることが多いです。(マイホームに住まなくなってから3年以内に売却するなどの適用要件がありますのでご注意ください)

※3
マイホームを売却した場合の譲渡所得税の税率は次の区分により変わります。
①マイホームの所有期間が5年超かどうか

・5年以内 譲渡所得の39%
・5年超  譲渡所得の20%

②マイホームの所有期間が10年超かどうか

・5年超10年以内             譲渡所得の20%
・10年超で譲渡所得6000万円以下    譲渡所得の14%
・10年超で譲渡所得6000万円超の部分  譲渡所得の20%

文字にするとややこしいですが、ずっと昔から所有していたマイホームを売却して譲渡所得が6000万円以下であれば税率は14%になるという制度です。
これもマイホーム売却に関わる税負担を軽くするという制度の一環です。
但し、この〇年という所有期間については、「その年の1月1日時点で」という要件がありますのでご注意ください。

尚、税にかかわるご相談に応じることは税理士の独占業務であって、本来はそれ以外の人が個別の税務相談に応じることはできません。
不動産業者が出来るのはあくまでも「一般的」なお話しであり、せいぜいザックリと税額はこの程度では?というレべルの税計算までです。
不動産を売却した際の譲渡所得税については細かい要件などもありますので改めて記事にしてご説明をさせて頂ければと思います。

 

8.手取り額の計算

不動産を売却した際の手取り額は以下のプラス項目からマイナス項目を指し引いた金額となります。

<プラス項目>

売買代金

<マイナス項目>

・土地の測量費
・仲介手数料
・印紙代
・登記費用(抵当権抹消・司法書士報酬)
・インスペクション(建物状況調査)
・その他の費用
・譲渡所得に対する税金

実はマイナス項目のうちこれは絶対にかかるという費用はありません。
簡単に言うと、測量はしません、売却は不動産会社に頼みません(買主側に不動産業者が入るのは可)、契約書はコピーで良いです、抵当権等の権利は付いていません、インスペクションも致しません、税金はかかりませんでした、といった場合には売却にかかわる経費はほとんどゼロになります。
しかし一般的にはそのような売り方で売却が出来るかと言えば、よほどの好条件物件でな限り難しいのが実情です。
多くの場合はここで挙げた費用(マイナス項目)のうち、少なくとも上の3つはほぼ確実にかかりますし、譲渡所得税はありていに言うと大きく儲かればかかります。

これらの項目が大体いくらぐらいなのかということは残念ながら一概には言えませんが、売却コストは広くてややこしい土地であれば当然増えますし、建物も同様で古くて大きければ増えることになります。
マイホームに限らず不動産の売却は個別性の強いお話しですので、やはり具体的な金額は相談をして初めて見えてくるものだと思います。
もし売却をお考えの方がいらっしゃいましたら、弊社では無理な売却をお勧めすることはありませんので是非お気軽にご相談頂けたらと思います。

 

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