以前、「相続税計算の注意点(課税価格の合計の計算)」という記事を書きました。
これは相続税の計算において、相続財産に負債がある場合に、遺産分割の仕方によって相続税がかかる場合とかからない場合があるということをご説明したものでした。
今回は被相続人の自宅の敷地(宅地等)の評価額を大幅に下げることができる「小規模宅地等の評価減の特例」について、現物分割と代償分割では相続人が相続する財産の価額は同じであっても相続税額が異なることがあるという例をご紹介させて頂きたいと思います。
<例>
子Aが被相続人と同居、子Bがは別居の場合、小規模宅地等の評価減の特例は子Aだけが適用の対象となります。
課税価格の合計から基礎控除を差し引くと
相続税の総額は
各人の相続税額(課税価格の割合で按分します)
遺産分割は子Aが自宅を相続し、子Aは子Bに対し代償金として10,000万円を支払うこととします。
課税価格の合計から基礎控除を差し引くと
相続税の総額は
各人の相続税額(課税価格の割合で按分します)
代償分割はある財産を相続した相続人が、他の相続人に自分の財産を給付することで相続分のバランスをとる遺産分割方法です。
上の例では、自宅は全て子Aが相続していますので、「小規模宅地等の評価減の特例」も敷地(宅地等)全体に適用できることになります。
結果として、相続税額も現物分割(共有)よりも代償分割の方が少なくなります。
同じ相続財産でも遺産分割の仕方によって相続税額が異なるという点では、前回の負債がある場合の遺産分割と同様です。
代償分割は「自分の財産で他の相続人に財産を給付する」という遺産分割であるため、代償する相続人には相応の資力が求められますが、もし手持ちの財産に余裕があるのであれば代償分割の方が相続税が少なくなることがあります。
相続税ありきの遺産分割は時に弊害が生じることもありますが、遺産分割をする上で、この様な相続税計算の特性は知っておいて損はないと思います。