不動産と相続の関係

看板をリニューアルして約2週間。
近所の方にも「看板変えたね」と言われます。
ただ先日言われたのは「でも、なんで不動産屋が相続の相談なの??」というご質問。
確かに不動産会社と相続相談というのは結びつきづらいかもしれません。
しかし本来、相続と不動産には切っても切れない関係があります。
弊社ホームページ「しあわせハウジングの相続・不動産ガイド」でもそのことは、トップページに記しています。
では、不動産と相続にはどのような関係があるのか?
まとめてみるとこんな感じです。

不動産と相続にはどのような関係があるのか?

相続財産に不動産がある場合、遺産分割をする上で、不動産の取り扱いは次の4つに分かれます。

①特定の相続人が相続する
②相続人同士で共有する
③分割して相続する
④売却して現金化して相続する

①の「特定の相続人が相続する」には、遺言による指定に基づく場合と、遺産分割協議に拠る場合があります。
正式な遺言がある場合にはその内容に従い相続できますが、遺産分割協議による場合は、一般によく知られる通り上手くまとまるとは限りません。
不動産の価値が高い場合などには、遺産分割協議は特に難航しやすいです。

②の「共有」は持ち分割合で相続人がそれぞれ所有権を持つ形です。
持ち分割合は何もしないと法定相続分となりますが、話し合いで自由な割合を決めることも可能です。
共有による相続は一見公平なようですが、不動産を売却する場合などには共有者全員の合意が必要になりますし、共有者に相続が発生するとさらに所有権が細分化する恐れがあります。
基本的に共有は避けるべき相続方法とされています。

③の分割した後で各相続人がそれぞれを所有する方法は、まず相続人同士で上手く話し合いがまとまることと、分割しても不動産の価値が下がらないということが必要です。
整形で十分な広さがあり、さらには間口も広い更地でもない限り分割することで価値が下がってしまう不動産が多く、現実的には難しい方法です。
また建物などそもそも物理的に分割ができない不動産もあります。

④の「売却して現金化する方法」は、その不動産を利用する必要のある相続人がいない場合には採用しやすく、公平な分割がしやすい方法です。
但し、不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生すると不動産の譲渡所得税が課税されますし、何よりも市場性のある「売れる」不動産であることが大前提となります。

不動産会社がかかわること

相続財産に不動産がある場合の、不動産業者としてのかかわりあいを見ていきます。

当然ですが④の「売却して現金化」であれば、不動産業者の本来業務として売却先を見つけることが可能です。
これは宅建業免許をもっている不動産業者にしかできない業務ですし、一般的にもご理解されやすい業務だと思います。

では①の「誰かが代表して取得する」場合や、②の「共有する」、③の「分割して所有する」の場合には、どのような関係があるのでしょうか?
最も大事な仕事は「その不動産にいくらの価値があるのか」の調査やアドバイスです。
遺産分割協議で誰かが不動産を相続するにしても、「この不動産には実際にいくらの価値があるのか?」という観点を抜きにしては話が進みません。(もちろんそうでない場合もありますが)
遺産分割では代償分割と言って、不動産などの現物財産を取得した相続人が、他の相続人に対し現金等の財産を交付して相続分のバランスを取る方法がありますが、そのためにも対象となる不動産の本当の価値を知る必要があり、その場合の価格は相続税計算上の評価額ではなく、実際の市場価格(=時価)となります。
例えば、一等地にある土地であっても、法令上建物の建て替えが出来なかったり、境界が未確定、あるいは第三者の利用権や担保権の対象となっている土地は当然価値は下がり、一等地としての評価はされません。
これは非常に重要な論点で、これらの内容を調査によって確認し、それによる減価割合や解消方法などを検討することは不動産業者の主要業務となります。

それ以外に不動産業者がかかわること

実際に不動産を売却する、あるいは不動産の価値を把握する以外に不動産業者が相続問題にかかわることには何があるでしょうか?
例えば次のようなことが挙げられます。

不動産の購入

相続税を減らすための方策として、不動産を購入したり建築するという方法があります。
これは現金よりも不動産の方が相続税計算上の評価額が低くなることを利用した、節税対策としてポピュラーなものです。
不動産の購入や建築の実務的なお手伝いは不動産業者の本来業務ですし、節税目的とはいえやみくもに不動産を買ったり建てたりするわけにはいきませんので、収益性や将来の売却の可能性などの観点から検討し、具体的なアドバイスをすることが出来ます。

不動産の有効活用

遊休不動産がある場合、その不動産を最適用途で有効活用して収益を上げる、あるいは相続税計算上の評価額を下げるといったアドバイスも当然不動産業者の業務となります。
(但し、具体的な税額計算は税理士さんの業務となりますので、連携して仕事を進める必要があります)

不動産の入れ替え

ある不動産を売却して、新たな不動産を購入する。
大掛かりな手続きですが、相続税対策としては決して珍しくありません。
例えば郊外の土地を売却して、駅の近くの区分所有マンションを購入するといった内容です。
郊外の土地では賃貸経営が難しくても、駅の近くの区分所有マンションであれば高い収益性が見込める場合もありますし、区分所有で複数の部屋を購入すれば遺産分割がしやすくなるというメリットもあります。
この様に不動産を売却すること、購入することのお手伝いは当然不動産業者の本来業務です。

不動産業者と相続の関係

ここまで述べてきた通り、相続財産に不動産があるということは、不動産業者には何らかの出番があるということです。
しかし、お客様が相続財産である不動産をどのように取り扱うかをご自身で判断することは決して簡単なことではありません。
他の財産との兼ね合いや、相続人の構成や関係性、相続税の課税見込みなど、相続手続き全体を見据えた上で不動産を考えていく必要があるからです。
「不動産を売りたい」と言われて出来ない不動産業者はいませんが、「将来の相続を考えたときに不動産を売った方が良いのか、あるいはそのままが良いのか?」、「有効活用をしたほうが良いのか?その場合の最適な用途は?」、「そのことによる相続税の変化や遺産分割への影響は?」といったことを相続全体の視点から見ることができる不動産業者は決して多くありません。
そしてこれらは不動産業者が単独で行えることでもなく、税理士さんや司法書士さん、土地家屋調査士さんなど他の士業の方々との連携は欠かせません。
その場合にもその方々が相続に詳しいかどうかという観点は非常に重要になります。

不動産はその価値が高くても低くても相続手続きに与える影響は大きいです。
価値が高ければ皆が欲しがりますし、価値が低ければ誰も欲しがりません。
不動産は現金などと異なり、持っているだけでコストがかかり責任が生じる財産ですので、それを上回るメリットがあるか無いかが判断の基準となり、それを相続という様々な論点・観点のある手続きの中で検討していく必要があります。

相続を迎えるにあたっては、不動産の取り扱いが非常に重要になるということをご理解いただけたらと思います。

 

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