【家族信託⑪】家族信託の留意事項(最終回)

家族信託の留意事項

ここまでご説明をしてきたことに加え、家族信託には重要なポイントがいくつかあります。

 

1)信託契約は意思能力があるうちに結ぶ必要があります

信託契約自体が法律行為ですので意思能力を失ってしまった後では結ぶことはできません。

家族信託は本人が意思能力を失った後でも財産の管理・運用が出来る制度ですが、前提となる信託契約は意思能力があるうちに結ぶ必要があります。

繰り返しますが、本人が意思能力を失ってしまった後では家族信託を組成することはできないという点にご注意ください。

 

2)公正証書による契約

原則として信託契約の様式に制限はありませんが、実務上は信託契約を結ぶ際には公正証書による契約書とすることが一般的です。

これは公正証書にすることで、法律上の無効や偽造の疑い、紛失等のリスクを一定範囲で避けることが出来るからです。

 

3)日の浅い制度である

家族信託は普及してから日の浅い制度であるため、裁判例などが十分にそろっていません。
現在有力とされている学説などが将来的に覆る可能性は否定できません。

 

4)相続税課税

家族信託の特長を一言でいうと、「財産を受益権化する」という点にありますが、相続税課税という観点では通常の相続と異なる点はありません。
家族信託では受託者が信託行為として相続税の節税対策を行うことは可能ですが、制度そのものが節税対策に直結するわけではないという点はご理解ください。

 

5)遺留分

受益権も遺留分の対象となります。
即ち特定の相続人が受益権をすべて取得するような信託契約を結んでしまうと、他の相続人から遺留分侵害を主張される恐れがあります。

※受益者連続型の信託においては、最初の相続(受益権の承継)のみが遺留分の対象になるとする学説が有力です。

 

6)すべての問題点を解決できるわけではありません

家族信託は財産の管理・運用について、従来にない特別な効力を発揮する画期的な制度ですが、あくまでも財産に特化した制度であって相続問題全てを解決するものではないということをご理解下さい。(本人の身上監護など依然として従来の後見制度でしか対応できない事柄もあります)

 

7)複雑にしすぎない

認知症対策、遺言代用機能、受益者連続型など様々な機能を持った家族信託ですが、家族の目的によって使い道は異なります。

目的がありそのために家族信託をどのように活用するのかという点を家族全員が理解しておくためには、信託の仕組みをあまり複雑にしないことが望ましいと言えます。

 

8)金融機関の協力

相続対策として賃貸アパートの管理や建築を絡めた家族信託を組む場合などには金融機関との連携が不可欠です。

現状、家族信託に対する金融機関のスタンスには温度差がありますので、信託契約を結ぶ段階から必要に応じて金融機関と連携して取り組む必要があります。

 

9)金融機関の信託商品とは異なります

近年、金融機関でも「信託」と名前の付く商品を色々と販売していますが、金銭のみが対象であったり、遺言の保管や死後の遺品整理などが中心となるものがほとんどです。

また一定の財産規模が条件になることが多いので、家族だけで自由に財産管理を設計できる家族信託とは根本的に内容が異なるものであることをご理解下さい。

 

今回をもって家族信託シリーズは終了となります。
高齢化社会が到来し、認知症等による意思能力の喪失が他人事でない現実的なリスクとなる中で、意思能力喪失後の財産凍結を回避する手段として家族信託が脚光を浴びています。

家族信託は全ての相続問題と解決する万能薬ではありませんが、今まで治療法の無かった分野に効く有力なツールであることは間違いありません。

日の浅い制度ですので実際の家族信託の組成については、実績が豊富で最新事情に精通した専門家と協力して進めていくことが大切です。
またお客様におかれては今現在感じている漠然とした不安と、その上でどのような対策を講じたいと考えてるのかということを、まずはご家族で共有する必要があります。

一般に相続問題はわからないことが多くご不安な点も多々あると思います。
いきなり相続対策をどうする!?と構えるのではなく、まずは現状の不安や問題点をご相談ください。
弊社ではお話しをお伺いさせて頂いて上で、問題点の整理や今後の方針等について一緒に解決していければと考えておりますので、是非お気軽にお問い合わせください。

(家族信託の組成に関しては日本有数の実績を誇る司法書士事務所と提携をしております)

 

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