【家族信託⑥】信託の終了

家族信託シリーズ第六弾は信託の終了についてです。

家族信託は契約に基づく権利関係ですので、契約が終了すれば終了します。
家族信託の終了事由は信託法という法律でも定められていますが、実務上は信託契約の中で条件を定めます。

終了

 

1.信託契約による主な信託の終了事由

信託契約は私的な契約ですので信託終了事由は当事者間で自由に取り決めることが出来ますが、実務上は次の終了事由が多いです。

1)委託者兼受益者の死亡

最も多い信託の終了事由は「委託者兼受益者」が死亡した時に信託を終了させるというものです。
そもそも家族信託は高齢の親のために子供が法律行為を代行することを目的とすることが多いため、その親(委託者兼受益者)が死亡した場合には信託を終了させると定めることが多いです。

2)受託者と受益者の合意

家族信託は受益者のために受託者が財産を管理・運用する仕組みですので、この二人の合意で信託が終了するという定めを加えることも多いです。
(但し、受益者が認知症等で意思能力を失ってしまうとこの合意をすることが出来なくなってしまうというリスクはあります)

3)受益者の死亡

後で説明しますが家族信託では当初の受益者が死亡した場合などに、相続人など別の人が受益権を引き継ぐこともでき、これを「受益者連続型信託」と言います。
受益権が引き継がれ、その引き継いだ受益者が死亡したときに信託が終了するという定めにすることも可能です。

信託は基本的には高齢の親など法律行為を自分で行うことが難しくなりつつある方を助けるための制度ですので、信託を組んだ後に受益者等の死亡以外に信託を終了させる事由が生じることはあまり多くありません。
どのようなときに信託を終了させることが家族にとってベストなのかを想定して信託契約を結ぶ必要があります。

2.法律による主な信託の終了事由

信託法では次の事由に該当すると信託は終了すると定められています。
但し、家族信託は家族の目的に沿った自由な財産管理を行うための制度ですので、本来は契約によって終了事由を定めておくことが前提となります。
実務上は「信託法に定める信託の終了事由」に該当することが無いよう、信託契約を取り交わすことが重要になります。

1)委託者と受益者が合意した時

信託とはそもそも財産を自分以外の人に託して管理・運用してもらうもので、「頼んだ人=委託者」と「その結果の利益を受ける人=受益者」のための制度です。
法律上はこの当事者の合意により信託を終了させることができると定められています。
但し、「委託者兼受益者」の信託で本人が認知症になってしまった場合などには信託終了の意思表示ができないばかりか、本人に後見人が就任すると(※)、本人の代理人である後見人の一存で家族信託を終わらされてしまうリスクもあるため、実務上は信託契約において受託者の合意を合わせて必要とすると定めることが多いです。

※家族信託は後見制度に代わる制度ではありませんので、家族信託を活用した場合でも身上監護等の必要がある場合などには後見人が就任することはありえます。

2)受託者が死亡などにより不在となったまま1年間が経過した時

家族信託のキーパーソンである受託者が不在となると、財産の管理に支障が生じ受益者の権利も守られず、信託の目的が達成できなくなってしまう恐れがあります。
法律では受託者が1年以上不在になると信託は終了すると定められています。

3)受託者=受益者(受益権の権利者)となった時

受託者が受益権を単独で所有する状態が1年間継続すると信託は終了するとされています。
詳細は割愛しますが、この状態は人に託すという信託の制度目的に合致しないためと考えられています。
但し、実務上は一時的にこのような状態になることもありますので、法律上は1年間という猶予が設けられています。

4)期間の定め

受益権が引き継がれる「受益者連続型信託」でも説明しますが、受益者連続型信託では信託開始から30年経過後に新たに受益権を取得した者(新受益者)がいた場合、その者が死亡などで受益権を失うと信託は終了するとされています。

 

家族信託では信託の終わらせ方も重要です。
終了させるつもりはなかったのに図らずも信託が終了してしまうと、受益者が困るばかりか贈与税など思いもよらぬ課税が課せられてしまうこともありえます。(課税関係は別途後述します)
不測の事態で終了するのではなく、家族信託を継続する必要がなくなるタイミングを想定して信託契約で終了事由を定めることが重要になります。

 

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