家族信託シリーズ第二弾です。
今日は家族信託を構成する基本的な登場人物についてご説明をします。
家族信託を考える上ではまず「信託」という概念を理解する必要があります。
少し難しいイメージがあるかもしれませんが、そもそも信託とは「財産を自分以外の人に託して管理・運用してもらう」という仕組みであり、家族信託はこの財産を託される人が主に家族ということでこの名前が付いています。
認知症等の対策としての家族信託では基本的な形として次の登場人物が制度を構成します。
<イメージ図>
元々財産を所有している人で、その財産を信託する人となります。
家族信託の仕組みでは、高齢で将来的に自分で財産の管理・運用を行うことに支障が生じる可能性のある方が委託者になることが多いです。
委託者から財産の信託受け、その財産の管理・運用を行う人となります。
財産の適切な管理・運用の責任を負う受託者は、家族信託の仕組みの中で非常に重要な役割を担うことになるため、家族信託を組成する上で受託者を誰にするのかということは最も慎重に検討すべき事柄のひとつです。
(受託者は法人とすることや複数人とすることも可能です)
※受託者の役割や責任については改めて詳しくご説明を致します。
受託者が財産を管理・運用した結果の利益を受け取る権利(受益権)を持つ人を受益者と言います。
実務上、殆どの家族信託では「委託者兼受益者」となる仕組みが一般的です。
信託された財産は名義上、受託者へ所有権が移転しますが、通常の所有権移転とは異なり信託された財産から生じる収益等は受託者ではなく受益者に帰属します。(委託者兼受益者となるパターンが多いですが別の人でも可)
信託の基本的な仕組みは、財産の名義上の所有権と管理・運用権は受託者に移転するものの、受益権は受託者ではなくあくまでも受益者に帰属するため財産の実質的な所有者も受益者だとする点にあります。
家族信託ではまずこの考え方を理解することが非常に重要になります。
(例)
例えば父が土地を所有していたとします。
その後、土地の管理が大変になったため、父は自分の代わりに長男に土地の管理・運用をしてもらうよう信託をしました。(信託の開始)
この場合、父と長男の立場は以下の通りとなります
委託者:父
受託者:長男
受益者:父
土地の名義上の所有権は父から長男へ移転し、長男が自らの名義で土地を管理・運用することになりますが、土地から上がる収益等は受益者である父に帰属します。
そして信託開始後、長男がこの土地で月極駐車場を始めたとすると、その収益は長男の利益にはならず父の利益になります。
この様に家族信託の仕組みでは、名義上の所有者と実際に収益を得る人(実質的な所有者)が分離するという点をまずご理解ください。
尚、例として取り上げた土地を月極駐車場として管理・運用するような事例では、わざわざ信託という制度を使わずとも現実的には子供が父の名義で父に代わって管理をするというケースがよくあります。
ここでは例として簡単な事例を取り上げましたが、実際の家族信託では多額の現金の管理や自宅等の不動産の売却や購入、賃貸アパートの管理運営、建物の建築、会社の経営などもう少し大掛かりな業務を念頭に信託を組むケースが大半です。
家族信託においては財産の「名義と管理・運用権」が受託者に移る一方で、その財産から生じる「収益」は受益者のものになるという、所有権の分離ともいえる形態が制度の根幹となります。
少し難しい言葉になってしまいますが、所有権が「受益権化」するという概念が信託を理解する上での基本的な考え方となります。
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