借地の危険空き家 苦慮

これも8月20付の日経新聞朝刊の記事です。

借地上の空き家解体

深刻化している空き家問題ですが、所有者不明や共有者多数により処分の合意が取れない空き家が管理不十分となり周辺環境に悪影響や危険を及ぼしてしまうケースが増えています。

本来、空家の維持管理責任は所有者にありますが、所有者による適切な管理が行われない場合には、行政が「特定空き家」に指定し罰金や固定資産税の優遇停止等のペナルティを与えることが出来、最終的には行政が取り壊しを代執行(代わりに執行する)することも可能です。
但し、代執行はお金がかかることでもあり実際の執行件数はそれほど多くないと聞いていますが、行われた場合には当然その費用は所有者に請求されることになっています。

今回の記事では借地上の空き家の代執行についての問題を指摘しています。
借地権とは地主が土地を別の人に貸して、その人が建物を建てて利用する権利で、土地の権利が所有権(底地権=地主)と使用権(借地権=借地人・賃借人)に分かれる権利・利用形態を指します。
この借地上に建てられた建物は当然借地人のものですので、維持管理も借地人が負うことになります。
この借地上の建物が空き家となり管理不十分となった時に、行政が代執行を行ったとすると、取り壊し費用は一旦は行政が負担しそれを所有者(借地人)に請求するのが筋となります。
但し、これは地主にとっても大いにメリットがある話で、借地権という地主にとっては自己使用を阻む厄介な権利が付いた土地が、建物が無くなることにより借地権が消滅し所有権の土地として生まれ変わるからです。
今回の問題は行政の措置が土地所有者にとっては棚ぼたの様なメリットが生じてしまうことを指摘しています。

行政としては危険な空き家を放置すればそれはそれで問題ですが、その結果が地主のメリットにつながるという点はいかがなものかというジレンマです。
記事では基礎部分は残すなど危険除去のみが実現するように配慮するとか、解体後の更地は公益的な利用に供してもらうといった対策をとった例も取り上げられていますが、実際には地主の利益となっているケースが多いということも指摘しています。

借地上の空き家という問題は一般にはあまりピンとこない方が多いと思いますが、記事にもある通り既に起きていることですし、今後増えていく可能性は非常に高いと思われます。
これも土地は値上がりするという土地神話が崩れ、不動産が負動産になってしまう時代の問題だと言えます。

 

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