相続対策に関するお客様とのリアルな会話

先日、旧知のお客様(A様)と相続についてお話しをしていました。
真剣な相談というよりは雑談からの相続対策のような流れです。

A様「うちは私が死んだら相続揉めますかね?」
私「揉めないとは言い切れないでしょう。今の時代、財産がゼロでもない限り絶対に揉めない相続なんてないですよ」

A様「家族はみんな仲はいいけどね」
私「財産がお金だけならまだいいですけど、不動産があるとわけづらいですよ」

A様「相続税はかかるのかな?」
私「もしかしたらかかるかもしれませんけど、それよりも遺産分割の方に気を遣った方がいいかもしれないですね」
私「相続税は財産が評価額で1億円ぐらいまでであれば、そんなに気にしなくても大丈夫なんですよ。これが3億円とかになってくると税金も千万単位になるので、対策取らないと大変なことになりますけど」
A様「そんなものなの?」

私「A様の場合、奥様とお子様で相続人が4人ですから、基礎控除が5400万円とれますし、それを法定相続分で分けたとすると(と言って電卓をパチパチ叩く)、大雑把に言って財産が1億円あったとしても相続税はお子様二人で245万円ですね。奥様は配偶者控除があるので相続税はかかりません」
A様「だったら心配ないかな」

私「ただ相続税はそれでもいいんですけど、実際に財産を法定相続分で分けるというのが結構難しいんですよね」
A様「そうなの?」

私「実際、家とかは分けられないじゃないですか?共有は後で揉めますから全体にだめですよ。なので普通はご自宅は奥様が相続するとして、あと現金もある程度は奥様が相続しないと、生活費もありますでしょ?ただそうするとお子様がどの程度相続できるのかっていう問題がでてくるんですよね」
A様「だったら、いっそのこと全部かみさんが相続したらいいんじゃない?それは可能なの?」
私「可能ですし、その方が当面の相続税も少なくなるんですけど、そうすると奥様が亡くなった時の相続税が多くなってしまうかもしれないですね」
A様「そうなの?」

私「奥様がどれくらいの財産を残すのかに拠りますけど、基本的には奥様が亡くなった時は、相続人が3人になって基礎控除が減りますし、配偶者控除の様な税額控除もありませんので相続税が多くなってしまう可能性はありますね」
私「それに、相続って奥様が亡くなった後の相続、これを二次相続と言うんですけど、相続は二次相続が揉めるんですよ。Aさんが亡くなった時の相続はなんだかんだ言って奥様を中心にまとまるんですよ。だって普通は皆さんまずはお母様の生活を安定させることを考えますし、お母様が財産を多めに相続しても文句を言う子供はそうはいませんから。でも奥様がお亡くなりになると、お子様皆さんもそれぞれ言いたいことが出てくるわけですよ。これは今仲が良いからと言っても安心はできない問題です」
A様「うーん。でもその時おれはもうこの世にいないわけだしね」
私「そうなんですよ。結局、相続問題って後になって起きる可能性があるので、今のうちからそうならないためにどうするかを考えておく必要があるんですよね」
A様「なるほどねー」

多少フィクションも交えてますけれど概ねこのような感じの会話でした。
というよりもこの手の会話はしょっちゅう行っています。

短い会話ですが、ポイントは

1.財産がある限り、絶対に揉めない相続は無いということ
2.一般に相続税は相続財産が1億円程度までであれば、それほど多額にはならないこと(ご家庭によりますが)
3.相続財産が余程多くない限り、相続税よりも遺産分割の方を心配したほうが良いこと
4.遺産分割協議で「法定相続分」で分けるというのは、口で言うのは簡単ですが、実際は難しいということ
5.遺産分割協議は一次相続よりも二次相続が圧倒的に揉めること

といったところです。
但し、これは本当にごくごく普通の一般論です。
実際にはこれらの内容に各ご家庭の個別の事情が必ず絡んできます。

例えば、

1.お子様の仲が悪い、あるいは親との折り合いの良し悪しにも差がある(子の配偶者と折り合いが悪いということもよくあります)
2.同居している子としていない子供がいる
3.孫がいる子といない子がいる
4.相続人間の家庭の状況が大きく異なる(むしろ普通は異なって当然です)
5.体調や持病の存在(親より子が先に亡くなることもあります)
6.離婚歴がある(前婚の子がいるな場合などは関係性が複雑になります)
7.相続財産に現金が殆どない(不動産など分けづらい財産が多いと大変です)
8.相続財産の種類が多く細かい
9.親が事業を営んでいる(後継者問題)、あるいは収益を生む相続財産がある(収益性の判断)
10.相続人が誰も欲しがらない相続財産がある(売れない田舎の土地など)

 

これらは普通によくある話ですが、いずれも相続が揉める原因になりえます。
よく相続は「感情と勘定」と言いますが、言い換えれば気持の面でも金銭の面でも全ての相続人が納得できる相続を実現することはむしろ相当難しいと思います。
相続対策はこれらの事情を加味して、将来の可能性を考慮の上、少しでも争いが起きないようオーダーメイドで行う必要があると言えます。

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