地中埋設物の取り扱い【瑕疵担保責任】

少し前に土地の売買契約を間近に控えた方からセカンドオピニオン的な相談を受けました。

ある土地を住宅新築の目的で購入しようとしているところ、その土地上には古い建物が建っていて、その建物は売主にて取り壊したうえで引き渡すという条件とのことなのですが、地中には使っていない浄化槽があるらしく、この撤去はどうなるのですか?というご相談です。

今回のケースでは、地中に建物新築に支障をきたす恐れのある浄化槽の存在が明らかなのであれば、土地上の建物や構築物に準じて売主にて撤去した上で引き渡すというのが本来の形だと思われますが、費用の掛かることでもあり、後のトラブルを避けるためにも取り扱いをどうするのかは当然売主に確認をするべきです。
「土地上の建物を取り壊したうえで」という引き渡し条件に、地中埋設物も含まれるのかという点が問題となる可能性があるからです。

一方、既に存在が明らかな地中埋設物について、売主が撤去した上で引き渡さなくてはならないという決まりはありませんので、もし売主が浄化槽の撤去はしたくないと言うのであれば、話し合いで誰が撤去するのか(あるいは撤去をしないのか)を決めるしかありません。
売主がどうしても浄化槽の撤去に応じてくれないのであれば、買主はその土地を購入しないという判断もできますし、それでもその土地を手に入れたいとなれば撤去費用は自分が持つ代わりに値段を下げてもらう、あるいはやむを得ずそのままでの引き渡しを受け入れるという選択肢もあります。
これはある意味売主と買主の力関係による部分が大きいです。

次に今回のケースとは異なりますが、そもそも浄化槽に限らず地中埋設物があるのかないのかがわからないということも多いです。
むしろ見えない地中のことですからすべて把握することの方が難しいともいえるわけで、その場合には地中埋設物があるかはわからないという前提で売買契約を結びます。
この場合、売主も知らない埋設物等が引き渡し後に発見されたときには、この埋設物等は隠れた瑕疵(かし/物件の不具合のことです)という扱いとなり、売主が自らの責任で瑕疵を取り除く義務を負います。
これを売主の瑕疵担保責任と言い、隠れた瑕疵には土地の埋設物以外にも井戸や土壌汚染、建物であれば雨漏りやシロアリの被害、それ以外では事件事故の履歴などが該当します。

売主が瑕疵担保責任を負う期間は、売主が宅建業者であるときには2年より短くすることはできませんが、売主が宅建業者でない場合には当事者間で自由に期間を決めることができます。
通常は3カ月程度と定めることが多いですが、売主が破産状態の場合など実質的に瑕疵担保責任の履行が出来ないようなケースでは瑕疵担保免責という条件で契約をすることもあります。
この場合、買主のリスクが大きいので当然その分価格は下がります。

一番問題になるのは、売主が瑕疵の存在を知っていながら隠していたときや、仲介業者がその事実を知っていながら説明をしなかった場合です。
売主としては、問題点を明らかにすれば交渉事になるので知っていても黙っておこうという心理が働くからですが、これは本来の契約関係を阻害する不法行為となり損害賠償の請求対象となりますので、売主として行うべきでないのは言うまでもありません。

尚、個人間の不動産売買における瑕疵担保責任について、契約上特に取り決めをしない場合には「瑕疵の存在を知ってから1年間、引き渡しから10年間」を経過した時に消滅するとされています。
逆に言うと、売主は契約上特に取り決めをしていなければ、引き渡した不動産について10年にわたり瑕疵担保責任を負うことになり、非常にリスクが大きくなります。
またこれらは民法の定めとなりますが、法人同士の取引の場合には商法の規定が適用され瑕疵担保責任についても内容が異なりますので注意が必要です。

 

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