日経社説 不動産向け融資の総点検を

2019年4月19日の日経新聞朝刊です。

文中にもありますが、金融機関の不動産向け融資が盛んになったのは、2015年の相続税の基礎控除引き下げがきっかけです。
相続税の節税対策としてのアパート・マンション建築が非常に増えました。

なぜアパート・マンションの建築が相続税の節税になるのかと言えば、不動産は現金と比べて相続税計算における財産評価額が低く見積もられるからで、さらに不動産を人に貸すと、土地は「貸家建付地」、建物は「貸家」としてさらに評価額が下がるからです。
(概ね土地が2割、建物が3割下がります)

一方、不動産は担保価値のある財産ですので金融機関としても融資がしやすく、地主にとっても賃貸アパートなどが生み出す賃料収入は魅力的です。
つまりハウスメーカーにとっては建築受注、金融機関にとっては低リスク融資、地主にとっては相続税対策と安定収入という、それぞれにメリットのあるスキームが組まれたことになります。
また金融機関の積極的な貸し出し姿勢を受けて、自己資金なしのフルローンで投資用収益物件を購入する人も多く、不動産向け融資は加速度的に膨らみました。

そのような加熱した不動産向け融資は歪も生み、需要を無視した賃貸アパートの建築や土地や建築価格の高騰、さらには「かぼちゃの馬車のスルガ銀行の不正融資問題」や「レオパレスの違法建築(手抜き工事)問題」などにも繋がりました。

但し、この様な状況を受けて金融庁ではかなり以前から不動産向け融資を精査するよう金融機関に通達を出しており、実は不動産取引の現場感覚では記事にあるような「銀行の不動産業向け貸し出しはバブル期並みに加熱しつつある」という時代はとうに終わりを告げています。
むしろ「銀行は貸してくれない」というのが現在の状況で、投資用収益物件にしても、買いたい人はいても買える人が少ないというのが実情です。
先日も1件賃貸マンションの売却査定の依頼を受けましたが、この様なお話しを売主様に伝えたところ、やはりだいぶ驚いていました。

リーマンショックなど新聞を賑わすような経済事件が無くても、経済情勢は静かに変わります。
何となく景気はこの後冷え込む方向に進むような気もしていますが、その場合でも新しい動きは必ず生まれます。
こういう時にこそアンテナを立てておく必要性を感じています。

 

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