相続した空家の売却 新ルールで節税しやすく

3月30日付の日経新聞に掲載された、「相続で取得した空き家を売却した際の税制特例」の拡充についての記事です。

まず前提として、相続で取得した空き家を売却した際の税制特例についてですが、これは一定要件に該当する空き家を相続で取得した人が、その空き家を売却した際の売却利益(譲渡所得)から3000万円が控除できるという制度です。
近年、全国的に空き家の放置問題が深刻になっているため、空き家の流通を促進させるために2016年の4月から導入されました。
これはマイホーム(居住用財産)を売却した際に適用される3000万円特別控除の相続版ともいえる制度ですが、制度適用の要件は次の通りとなっています。

<相続で取得した空家の売却した際の特別控除の特例>

1)対象となる空き家は1981年5月31日以前に建築された住宅
2)売却する際には、建物を耐震リフォームをするか、解体して更地にする
3)相続開始から3年経過後の日が属する日の12月31日までに売却する
(2019年4月1日に相続があれば、2022年12月31日が期限となります)
4)空き家を取得したのが相続人であること(相続人以外の人が遺贈で取得した場合は不可)
5)相続開始直前にその被相続人以外が居住していないこと(1人暮らしであったこと)
6)相続開始から譲渡の日までに人に貸したり住まわせたりしていないこと(更地にしたときも同様)
7)譲渡価額が1億円以下であること
8)区分所有建物(マンション)は適用外

これ以外にも細かい要件はありますが、制度としては
「更地にして売却した時も特例が受けられる」
という点に大きな特長があります。
これは、1人暮らしの親が住んでいた自宅を、相続人が相続した後に取り壊して更地にして売却するというもので、親の自宅を相続したけれども、自分には住む予定がないというケースをイメージしてもらえると分かりやすいと思います。
譲渡所得は、売却価額から取得経費や建物解体費、測量費や仲介手数料といった経費を差し引いた金額ですので、その金額が3000万円以下であれば譲渡所得税等はかからないということになります。
(通常は被相続人の自宅の保有期間によって、譲渡所得の39%または20%または14%の所得税及び住民税が課税され、さらに所得税額の2.1%の復興税が課税されます)

一方で、「相続開始直前にその被相続人以外が居住していないこと」という要件は、制度適用時に足かせになることが多々ありました。
つまり、老人ホームなどに入所していると「直前居住」の要件を満たせなくなり、特例を受けられないという問題です。

今回の改正では、被相続人が介護保険法に規定する要介護認定などを受け、老人ホームに入所している場合も適用されるようになりました。
(なので、子供の家に引き取られていたという様な場合には適用されません)

この特例は土地の需要が高いエリアではとても有効ですので、相続した実家に引き続き居住する相続人がおらず、いずれは売却を検討するという場合には、適用期限内に売却した方が圧倒的にメリットがあります。
尚、自宅の敷地に「小規模宅地等の特例」を適用する場合には、相続した自宅を相続税の申告期限(相続開始の翌日から10ヶ月以内)までは保有していなくてはならないという要件がありますので、その点には注意が必要です。

 

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