所有者不明土地 法改正へ

昨年の相続法(民法)の改正に引き続き、相続関係の法律が大きく変わる可能性があります。

現在検討されているテーマは、

1)相続登記の義務化
2)土地放棄制度の創設
3)遺産分割協議の期限設定

です。
実はこれら3つは全て根っ子でつながっていて、表題の所有者不明土地と関係します。

例えばある地方の不動産所有者に相続が発生したとします。
残されたものがいくらかでも売れる不動産であればよいのですが、今は経済的価値が殆どないいわゆる「負動産」が増えており、その様な不動産は相続人も欲しがりません。

相続が発生すると、相続財産は遺言等で取得者が指定されているものを除き、法律上は全ての相続人により法定相続分で一旦共有されます。
当然、引き取り手のない不動産も相続開始時点では全相続人により共有された状態となります。
本来であればその後遺産分割協議を行い、正式に相続する人を決めた上で相続登記をするのがあるべき姿なのですが、もともと欲しがる人のいない不動産の場合では、いつまで経っても遺産分割協議自体が行われないことが多いです。
また不動産の登記は自分が権利者であることを第三者に対抗(主張)するための手続きですが、もともと欲しがる人のいない不動産では第三者に対抗しようという意志もなく、遺産分割協議が終わったとしても、わざわざ手数料を払ってまで登記を行わないというケースも多々あります。
遺産分割協議が行われない場合でも、共有であれば共有である旨の登記をすればよいのですが、実際には共有登記がなされることは少なく、結果的に登記上の不動産名義が亡くなった方のままで放置されることになります。
実はこういう不動産が日本中にたくさんあります。

そしてそのまま放置された不動産は、共有者が亡くなるとその共有分がさらに次の相続人へと相続され、価値のない不動産の共有持ち分が次々と細分化してしまいます。
特に被相続人に子供がいなくて配偶者と兄弟姉妹が相続人となり、その後それぞれの兄弟姉妹や子供が相続人となった場合や、離婚して前婚の子がいる場合などでは、相続人同士面識がないどころか誰かすら知らないということが普通に起こりえます。
この様な状態になると、例えば公共事業用地として国や地方公共団体がその不動産を買い取りたいというような話があっても、だれが真の権利者なのかを追うことですら一苦労で、さらにその人の所在を確認することは困難を極めます。

そしてその場合に問題となるのが、共有物に関する法律です。
法律では共有物の処分(売却等)については、「共有者全員の同意が必要」と定められていますので、行方不明者を含め一人でも共有者の同意が得られない場合には、売却等は行えません。
つまり公共事業用地としてその不動産を買い取ってくれるというような良い話であっても、既に身動きが取れない状態になってしまっている不動産が非常に多いのです。

実は今日本では2016年時点で約410万ヘクタール(九州とほぼ同じ大きさ)という膨大な土地が所有者行方不明になっているそうです。
今回の法律の改正は、まさにこれ以上所有者不明の土地を増やさない、ということが主眼となっています。

1)相続登記の義務化
相続があれば必ず登記をして、最新の所有者を明らかにしておきなさいという趣旨となります(共有であれば共有持ち分を登記します)

2)土地放棄制度の創設
一定要件のもと土地所有権の放棄を認め、土地を遺産分割未了のまま放置させないという趣旨となります

3)遺産分割協議の期限設定
所定の年数が経過するまでに遺産分割協議を行い所有者を確定させるという趣旨となります。
遺産分割協議がまとまらない場合は、共有のまま遺産分割が終了したとみなすことになると思われます。

最終的に法律がどのような形で落ち着くかは不明ですが、最近は法改正も攻めの姿勢が感じられますので、大きく前進することを期待します。
また既に連絡のつかない共有者がいる場合に、現在の「失踪宣告」や「不在者財産管理人」などの手続きに代わり、所定の要件を満たしたうえで残りの共有者の判断で手続きが進められる仕組みなども検討されているらしいのでこちらも期待しています。

2019年2月9日付朝日新聞

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