不動産セミナー プロが空き家等の対策を解説

(公社)埼玉県宅地建物取引業協会主催のオープンセミナーに参加してきました。
オープンセミナーとは一般消費者を対象とした宅建協会のセミナーで、誰でも無料で受講することができます。

今回のテーマは空き家対策。
弊社も先日埼玉県の安心空き家管理サービス事業者に登録されたこともあり、一般消費者向けのセミナーがどのように行われているのかが興味があり受講してきました。
パッと見た感じでは一般の方なのか不動産業者なのか見分けはつきませんが、平日開催にもかかわらずラフな格好の方が多かったので、不動産業者はそれほど多くは無かったのかなという気はしました。

一般消費者を対象としたセミナーですので、講義内容は深く掘り下げるというよりは広く浅く空き家に関する問題点を網羅的に解説する内容でした。
こういうセミナーは頭の中を整理をするのにとても役立ちます。

セミナーのレジュメより(要点)
1.空き家問題の現状
1)平成25年時点で放置空家は318万戸。
2)空き家が生じる原因は
・核家族化の進行、都市部マンション等集合住宅への集中、高齢化による死亡や介護施設への入居
・新築が好まれ、中古住宅が好まれないという嗜好性
・空き家を取り壊す際のコスト負担(固定資産税の高額化、家屋の解体費用など)
3)所有する空き家が遠方にあり管理が難しい
4)相続が発生するも、相続人が多数いて収拾がつかない(意見の対立、共有状態)
5)近所の空き家が管理がされずに周辺環境に悪影響が生じている

2.特定空家等
1)市町村は次のような空き家とその敷地を「特定空家等」に指定できます
・そのまま放置すると倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
・衛生上有害
・著しく景観を損なっている状態
・周辺生活環境の保全上、放置することが不適切

市町村は「特定空家等」を指定すると、
・空き家の調査及び立ち入り
・固定資産税情報からの所有者の調査
・所有者に対し除去、修繕、立木の伐採等について助言、指導、勧告、命令、代執行ができる
とされています。
但し、代執行は予算の関係もありほとんど行われていないのが実情です。

2)特定空家等に指定され勧告を受けると、固定資産税・都市計画税の住宅の軽減措置が適用されずに、課税額が上昇します(敷地200㎡まで固定資産税が6倍)

3.空き家所有者の責任
空き家による近隣の迷惑について、防止及び改善の責任があるのは所有者となります。

4.建物所有者の調査等
空き家は管理責任者である所有者を把握するにも困難があります
1)法務局で不動産登記の確認
不動産の登記確認は誰でもできます。登記事項証明書には所有者とその住所が記載されています。但し、その場所にその人が住んでいるかは分かりませんし、戸籍とは連動しないので登記上の所有者が死亡していることもあり得ます。
建物登記がされていない場合(未登記建物)でも、固定資産税が課税されていることがあるので建物所在地の市町村で固定資産税評価証明書を取得する方法もありますが、個人情報との絡みがあるので弁護士に依頼する方が無難です。

2)登記名義人の住所の確認
登記事項証明書等に記載の住所から移動をしている場合、記載されている住所の住民票を取得します。
住民票は本人以外でも取ることは出来ますが、正当な事由が必要とされ、その要件は市町村によって差があります。
訴訟をするためといった切実度が問われる場合もあります。

3)登記名義人が死亡している場合
住民票の除票から本籍地を確認し、本籍地の市町村から戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)を取得します。
戸籍全部事項証明書はコンピュータ化された戸籍謄本のことで、コンピュータ化前に結婚や死亡で除籍になたものは記載されていないため、それ以前の戸籍の内容を確認するためには平成改正原戸籍を取得する必要があります。
相続人を特定したら戸籍の附票により住所の変遷をたどることが可能になります。

4)登記名義人が法人の場合
不動産登記を確認し法人の住所等を把握します。

5.建物所有者が共有・不明・不在の場合
1)空き家の所有者が死亡し、相続手続きが未了の場合

相続人全員による共有となるため処分等には全員の合意が必要になります。

2)空き家の所有者が死亡し、相続人がいない場合
利害関係人等が家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てを行い、選任された相続財産管理人が相続財産の処分手続きを行います(国庫への帰属など)。
相続財産管理人は弁護士等が選任されることが多く、作業や報酬に充てる費用として予納金を予め納付する必要があります。
予納金は数十万円から100万円程度かかることもありますので注意が必要です。

3)空き家の所有者、あるいは空き家の相続人が不明の場合
利害関係人等が家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。選任された不在者財産管理人は不在の者に代わり手続きを進めます。
この場合も予納金が必要になり、数十万円となることが多いです。

4)所有者が法人で、会社が清算されている場合など
利害関係人等が地方裁判所に精算人専任の申し立てを行い手続きを進めます。

6.誰に相談すればよいか
査定・売却・管理・賃貸・・・不動産業者
登記         ・・・司法書士
税金         ・・・税理士
法律紛争       ・・・弁護士

7.空き家問題の具体的な解決(対応)方法
1)基本的な手順は次の通りです。
 ①法律上の管理責任を負うものを探します(所有者、相続人等)
 ②その人物に対応を促す
 ③人物が多数あるいは存在しない時は、裁判所に申し立てて専門家を選任してもらう

2)相続財産に見るべき資産が無い場合は、相続放棄によって空き家の相続を逃れることが可能です。(相続開始を知った時から3ヶ月以内)
3ヶ月間の延長が認められることはありますが、3ヶ月が経過してしまってからの申し立てについては弁護士に相談が望ましいと言えます。

3)共有者の多い空き家は、相続人を確定した上で、遺産分割協議な成り立たない場合には家庭裁判所で遺産分割の審判を受けて所有権を取得します(代償金の支払い等が必要です)

4)相続人の中に認知症など意思判断能力に欠ける者がいる場合には、親族等が成年後見人の選任を申し立てます。成年後見人は本人のために財産管理と身上監護を行います。

5)相続人がいない空き家が周辺環境に悪影響を及ぼしているときには、市に「特定空家等」に指定してもらい、市が利害関係人として家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任を申し立ててもらうことも方策の一つです。

7.空き家を売却する時の注意点
1)売主の瑕疵担保責任の免責
瑕疵担保責任とは売却時に売主が把握していなかった問題点の解決責任を指しますが、価格を下げても売主免責が望ましいと言えますが、それだと購入が出来ない不動産業者もいます

2)危険負担の取り決め
危険負担とは、売買契約締結から引き渡しまでの期間における天災等による対象物の毀損等の取り扱いを指します。契約の白紙撤回を含めて協議をし、売主が過大な引渡責任を負わないようにする必要があります

3)建物内の残置物の取り扱い
売主が所有権放棄して買主が処分という形が楽ですが、売主にて処分した上で売却をした方が価格は高くなります

4)境界確定義務
通常、建物敷地は隣地所有者と境界が確定した状態で引き渡しを行いますが、出来ない場合もあります。売却価格には大きく影響します。

5)現状有姿での引渡とするか
現状あるがままの状態で引き渡しを行うことを現状有姿での引き渡しと言います。契約書に「現状有姿で引き渡す」と記載しても、上記1)の瑕疵担保責任まで免責になる訳ではありませんので注意が必要です。

6)樹木等の越境
越境をしている場合も、逆にされている場合もその旨を明示する必要があります。

7)特定空家等
特定空家等に該当している場合にはその旨を明示する必要があります。

8.空き家の利活用
現在は次のようなサービス等が行われています
1)空き家管理サービス・・・最近空き家を管理するというサービスを行う会社が増えています
2)空き家バンク・・・市町村が運営する空き家の賃貸、売却希望のマッチングサイトです
3)空き家解体ローン・・・空き家解体費用のローンを取り扱う金融機関があります
4)自治体の補助・・・空き家の解体、改修費の補助制度を設けている自治体もあります。
5)不動産オークション

空き家問題は今後ますます顕在化してくる社会問題です。
我々不動産業界にとっても看過できず、またビジネスチャンスになる可能性も当然あります。
相続と空き家、不動産と空き家問題については今後もいろいろ学んでいきたいと思います。

 

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