事業承継対策における生命保険の活用

今月は興味のあるセミナーが多いです。
日常的な仕事以外に、年末のあいさつ回りなど何かと忙しい月なので時間のやりくりが大変なのですが、それでもセミナーというものは常時開催されているわけではなく、殆どが年に1回、あるいはその時限りのものなので逃すわけにもいかず悩ましいところです。

昨日は「事業承継対策における生命保険活用」というテーマで、講師はプルデンシャル生命の営業教育開発チームのマネージャーさんでした。
現役の保険会社の社員の方ですが、商品の説明ではなくあくまでも仕組みと活用方法のセミナーです。
聞き取りやすく大変参考になりました。

相続対策において生命保険は非常に特殊な位置づけで、トランプでいう所のジョーカーの様なオールマイティさがあります。
相続における生命保険金の主な特徴は、

1.原則として遺産分割協議の対象外となります
(受取人固有の財産となり、遺産分割協議とは関係なく受け取れます)
2.原則として遺留分の対象になりません
3.原則として相続放棄をしても受け取れます
4.相続人は生命保険金の相続税計算の非課税額(500万円×法定相続人)が利用できます
という所にあります。

例えば現金や預貯金が相続財産となった場合には当然遺産分割協議の対象となり、配分割合は相続人同士の話し合いによって決まりますが、生命保険であればお金を渡したい人を受取人とする保険契約を結んでおけば遺産分割協議とは切り離れてストレートに生命保険金という形で現金を取得させることが可能になります。
具体的には相続人間で折り合いが悪く遺産分割協議が揉めそうな場合には遺産分割の代用として、遺言で特定の相続人に財産を集中させた時などには、その相続人が他の相続人に支払う代償金や遺留分減殺請求に対する原資として生命保険金を活用することが可能になります。
尚、上記で原則としてと書いてあるのは何事にも例外があり、具体的には財産の大半を生命保険にして受取人を一人にするなど著しく不公平なことをした場合などが該当します。

生命保険金を事業承継対策に利用するというのも、基本的にはこれらのメリットを生かすものですが、法人の場合には代表者(現在の経営者)を被相続人とすることで、

1.代表者死亡後の生命保険金による運転資金の確保や債務の返済原資(受取人が法人の場合)
2.自社株式の買取資金(株が分散している場合の買い戻し資金)
3.後継者の相続税の納税資金の原資
4.後継者の他の相続人に対する代償金の原資
5.経営承継円滑化法により、後継者への自社株式の贈与を遺留分の算定の基礎から外すことの合意を得るための見返りとして(受取人は後継者以外の相続人)
6.保険料の損金算入
などの対策とメリットがあります。

要は事業承継対策も原資となるお金が無いと手が打てませんので、手元に潤沢な現金があればよいのですが、そうでない場合にはそのお金を生命保険を利用して確保し遺産分割対策や納税対策に備えるというのが基本的な方針ということになります。
但し、代表者が保険に加入できないとなるとこれらの対策をとることが出来ず根底からプランは崩れます。
生命保険を活用した相続対策は病気等が見つかる前に、つまりは持病が見つかる前の60代ぐらいまでに行うことが必要であるという点には注意が必要です。

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