2019年税制改正大綱

来年の税制改正は何といっても消費税率が8%から10%へ上がることが最大のトピックですが、関連して不動産と相続に関係する内容では次の点が注目されます。

1.住宅ローン控除の3年間延長
住宅販売(建築)は消費税アップ前の駆け込み契約により需要を先食いしてしまい、その後の反動による落ち込みが懸念されます。
今回の施策は駆け込み契約とその後の落ち込みのギャップが大きくなりすぎないようにするものです。
具体的には2019年10月から2020年末までに契約し入居する住宅については、延長する3年間で消費税の増税分(建物価格の2%)を回収するという考え方です。

但し、その3年間で税額控除出来る年額は、
・年末残高の1%(従来の住宅ローン控除における税額控除の金額)
・建物価格の2%の三分の一(消費税増税分の三分の一)
の少ない方となります。
当然ローンの組み方や返済の仕方によっては思惑通り増税分の回収が出来ない可能性はあります。

2.住まいの給付金の拡充
従来よりも給付対象を拡充しました。
給付の対象となる方が収入が775万円以下となりました。(従来は510万円)
多くの方が対象になると思われます。

3.教育資金贈与の非課税措置の延長
父母あるいは祖父母から子や孫への教育資金の贈与が1500万円までは非課税となる制度が2020年3月末まで延長されました。
元々延長される見込みが大きかったのですが、贈与を受ける側の合計所得が1000万円を超える場合には対象外となったのは大きな変更点です。
また資金の用途についても多少制限が掛けられました。
元々高齢者の金融資産を若い世代へ移すことが目的の制度ですが、非課税額の大きさが相続税対策として効果的なことと、教育資金に用途が限定されるという点が気に入られ人気があります。
経済力の差が教育格差につながるという批判があり、制度そのものについても教育資金は本来その都度ごとに贈与をしても非課税となるケースが多いことや、思っていたほど子や孫に感謝されないという傾向もあり、あまり制度を評価をしない専門家が意外と多いのですが、取り敢えずは順当に延長がなされました。

4.個人事業主の事業承継
個人事業主が所有している事業用財産は、事業主が死亡すると全て相続財産となります。
事業用財産が相続財産になると、遺産分割協議により事業用財産が後継者以外に分散してしまったり、後継者が事業用財産以外の財産を取得できないといった事態が起こり得ます。
また遺言等により後継者に事業用財産を集中的に相続させた場合には、他の相続人の遺留分を侵害しかねません。
今回の措置により、個人事業主の事業用資産は贈与税が非課税となり(納税猶予)、その後一定要件を満たした場合には納税免除へと移行する見込みです。
この制度は10年間限定の制度で、国としてはその間に事業承継を進めて欲しいと考えています。
同様の制度は中小企業の事業承継においても設けられておりますので、その個人事業主版という考え方と言ってよいと思います。

税制改正は順当に進めば来年の4月から施行されます。
来年は1月早々から改正民法も施行され始めますので、制度の変更等については充分注意が必要です。

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